第46回 岐阜県方言論序説
農「やらー!」
商「もなー!」
士「おーしオマイら! 今日はオリら中沢四姉妹で、岐阜の方言について議論すっぞ!」
工「たく、ひょうじゅんごやもな」
農「あはは。タク~、あんたどえらー訛っとるよ? あたしの言葉が標準語やら!」
士「両方とも訛っとるぞ」
農&工「!?」
士「まぁ、まずはこの図を見ろ」
士「岐阜県は大まかにわけて美濃と飛騨にわかれる。この二つは文化的にも地理的にも大きく分断されとるが……実は美濃地方も、けっこう大きく別れるんじゃ」
農「西濃と東濃?」
士「ほーじゃ。ほんでこの二つは言語的に大きく違う。西濃は『近江語圏』、東濃は『三河語圏』じゃ」
工「おうみ?」
商「みかわー?」
士「近江は滋賀県。まあ関西弁じゃ。三河は愛知県。乱暴に括れば名古屋っぽい言葉や」
農「西と東が県内で併存しとるんやねー」
士「方言の専門書を読んでも、『岐阜の言葉は、関西の人間からは関東の言葉と、関東の言葉からは関西の言葉と思われてしまう』と書いたる。日本の真ん中やからこそ『どっちつかず』な言葉が生まれたってことやな」
農「あたしが『やら』って語尾につけとると、岐阜県の人からも『こんなの岐阜弁じゃねー!』って言われるのは、このせいやったんやね!?」
士「オマイが使っとるのはバリバリの東濃弁、しかも多治見あたりの言葉で、とくに三河語の影響が強い。西濃の人間からは同じ言葉とは思われんのやろな」
農「なんであたしは多治見の言葉を使っとるの?」
士「作者が多治見の言葉しかわからんからじゃ」
農「・・・」
士「まぁ、理由がないわけでもない」
農「?」
士「方言の伝播は、基本的に人間の移動と共に行われる。美濃加茂は電車で多治見と繋がっとるし、最近は道路も整備されて、作品の舞台の加茂農林は多治見から一番近い農業高校になったと言っても過言やない」
農「確かに多治見から来とりゃーす子はいっぱいおるねー」
士「作者が4年近く学校に通った結果、校内で使われとる方言は多治見の言葉と大差ないと感じた。東濃弁が公用語に近いもんで、オマイはほれに染まったんじゃ」
農「ほんでも各務原とかから来とりゃーす子もおるよ?」
士「ほーゆー子らも、学校で東濃の言葉がうつってまうで、家に帰ると『変な言葉をしゃべっとる!』と、からかわれるそうじゃ」
農「変な言葉?」
士「まー、最もわかりやすく現れるのは語尾じゃろな。東濃弁は『やら』で、西濃弁は『やろ』になる。ザックリ言うと」
工「たくは、『もな』っていうもな?」
商「あきもー! あきももなっていうもな!」
士「ほれは・・・ま、おいおい教えたるでな」
農「西濃弁と東濃弁の違いをわかりやすく感じてもらうには、どーしたらええんやろーね?」
士「西濃弁を使って書かれた有名な本は『桐島、部活やめるってよ』がある。作者の朝井リョウ先生(直木賞作家!)は大垣の方やそーじゃ」
農「東濃弁は?」
士「『のうりん』」
農「・・・」
士「さて、美濃地方には西濃と東濃の中間点である『中濃』というカテゴリーもある」
農「中●新聞やと『中濃版』もあるもんねー」
士「美濃加茂市はこの中濃のまさに基幹都市や。美濃太田駅は東濃に繋がる『太多線』と、西濃・飛騨を繋げる『高山線』が交差するポイントになる。西・東・そして北の言葉がぶつかり合うのがMINOKAMOなんじゃ!」
農「ほ、ほれは! ・・・・・・・・・どーゆーことになるの?」
士「中濃の言葉は村ごとに違う」
農「・・・」
士「これはほんまに物の本に書いたることで、採取してある単語を見ても確かにだいぶ違った。隣の村でも違う。おそらく三つの地方の綱引きによるもんやないかと思うが」
農「複雑なんやねぇ・・・」
士「『輪中根性』なんつー言葉もあるが、もともと山や川で分断されがちな岐阜は地域ごとの独立性が強いでな。どうしても微妙な違いが出るんやろ」
工「ねえま」
士「なんじゃ?」
工「たくのすんどるむらは、とうのう? せいのう?」
商「ほれとも、ちゅーのー?」
農「あ、ほれあたしも気になる!」
士「ええ質問やな。オリらの住む愛生村は・・・」
農「愛生村は?」
士「『奥美濃』じゃ!!」
農&工&商「!?」
続きます。
次回更新は3月17日を予定しています。
商「もなー!」
士「おーしオマイら! 今日はオリら中沢四姉妹で、岐阜の方言について議論すっぞ!」
工「たく、ひょうじゅんごやもな」
農「あはは。タク~、あんたどえらー訛っとるよ? あたしの言葉が標準語やら!」
士「両方とも訛っとるぞ」
農&工「!?」
士「まぁ、まずはこの図を見ろ」
士「岐阜県は大まかにわけて美濃と飛騨にわかれる。この二つは文化的にも地理的にも大きく分断されとるが……実は美濃地方も、けっこう大きく別れるんじゃ」
農「西濃と東濃?」
士「ほーじゃ。ほんでこの二つは言語的に大きく違う。西濃は『近江語圏』、東濃は『三河語圏』じゃ」
工「おうみ?」
商「みかわー?」
士「近江は滋賀県。まあ関西弁じゃ。三河は愛知県。乱暴に括れば名古屋っぽい言葉や」
農「西と東が県内で併存しとるんやねー」
士「方言の専門書を読んでも、『岐阜の言葉は、関西の人間からは関東の言葉と、関東の言葉からは関西の言葉と思われてしまう』と書いたる。日本の真ん中やからこそ『どっちつかず』な言葉が生まれたってことやな」
農「あたしが『やら』って語尾につけとると、岐阜県の人からも『こんなの岐阜弁じゃねー!』って言われるのは、このせいやったんやね!?」
士「オマイが使っとるのはバリバリの東濃弁、しかも多治見あたりの言葉で、とくに三河語の影響が強い。西濃の人間からは同じ言葉とは思われんのやろな」
農「なんであたしは多治見の言葉を使っとるの?」
士「作者が多治見の言葉しかわからんからじゃ」
農「・・・」
士「まぁ、理由がないわけでもない」
農「?」
士「方言の伝播は、基本的に人間の移動と共に行われる。美濃加茂は電車で多治見と繋がっとるし、最近は道路も整備されて、作品の舞台の加茂農林は多治見から一番近い農業高校になったと言っても過言やない」
農「確かに多治見から来とりゃーす子はいっぱいおるねー」
士「作者が4年近く学校に通った結果、校内で使われとる方言は多治見の言葉と大差ないと感じた。東濃弁が公用語に近いもんで、オマイはほれに染まったんじゃ」
農「ほんでも各務原とかから来とりゃーす子もおるよ?」
士「ほーゆー子らも、学校で東濃の言葉がうつってまうで、家に帰ると『変な言葉をしゃべっとる!』と、からかわれるそうじゃ」
農「変な言葉?」
士「まー、最もわかりやすく現れるのは語尾じゃろな。東濃弁は『やら』で、西濃弁は『やろ』になる。ザックリ言うと」
工「たくは、『もな』っていうもな?」
商「あきもー! あきももなっていうもな!」
士「ほれは・・・ま、おいおい教えたるでな」
農「西濃弁と東濃弁の違いをわかりやすく感じてもらうには、どーしたらええんやろーね?」
士「西濃弁を使って書かれた有名な本は『桐島、部活やめるってよ』がある。作者の朝井リョウ先生(直木賞作家!)は大垣の方やそーじゃ」
農「東濃弁は?」
士「『のうりん』」
農「・・・」
士「さて、美濃地方には西濃と東濃の中間点である『中濃』というカテゴリーもある」
農「中●新聞やと『中濃版』もあるもんねー」
士「美濃加茂市はこの中濃のまさに基幹都市や。美濃太田駅は東濃に繋がる『太多線』と、西濃・飛騨を繋げる『高山線』が交差するポイントになる。西・東・そして北の言葉がぶつかり合うのがMINOKAMOなんじゃ!」
農「ほ、ほれは! ・・・・・・・・・どーゆーことになるの?」
士「中濃の言葉は村ごとに違う」
農「・・・」
士「これはほんまに物の本に書いたることで、採取してある単語を見ても確かにだいぶ違った。隣の村でも違う。おそらく三つの地方の綱引きによるもんやないかと思うが」
農「複雑なんやねぇ・・・」
士「『輪中根性』なんつー言葉もあるが、もともと山や川で分断されがちな岐阜は地域ごとの独立性が強いでな。どうしても微妙な違いが出るんやろ」
工「ねえま」
士「なんじゃ?」
工「たくのすんどるむらは、とうのう? せいのう?」
商「ほれとも、ちゅーのー?」
農「あ、ほれあたしも気になる!」
士「ええ質問やな。オリらの住む愛生村は・・・」
農「愛生村は?」
士「『奥美濃』じゃ!!」
農&工&商「!?」
続きます。
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by thurinus
| 2014-02-24 21:00
| SS
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