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第5回 時をかけるアラフォー! メソポタミア文明滅亡の謎を追え!!

林檎「こんにちは。木下林檎です」

林檎「今日はわたしがブログを担当するのだけど・・・もう一人がまだ来ていません」

林檎「いったい、誰が来るのかしら・・・?」

 ザッ ザッ ザッ

?「・・・」

林檎「ッ!? あ、あなたは・・・!?」

?「・・・」

林檎「だれ!? いったいだれなのっ!?」

?「・・・」グォォォ・・・

林檎「な・・・なに!? これは――っ!?」

?「アラフォーディメンション!!」

林檎「きゃぁぁぁ――――ッ!!」

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

   ・

林檎「・・・うぅ・・・い、いったい何が・・・?」

?「木下さ~ん。だいじょうぶ~?」

林檎「!? あ、あなたは・・・あなたはわたしの担任・・・ベッキー先生!!」

40「そうだよ~! でゅへへへ~~♪ びっくりしたー?」

林檎「ベ・・・ベッキー先生、なぜあなたがここに・・・? ここはいったいどこなの・・・?」

40「メソポタミアだよ~」

林檎「メソ・・・え?」

40「いまわたしたちがいるのはー、紀元前2500年くらいのメソポタミアなんだよ~」

林檎「な、なんですって――――ッ!?」

40「先生の放ったアラフォーディメンションによって、木下さんは異次元に飛ばされてしまいました。今わたしたちは異次元の空間に存在しつつ、紀元前2500年のメソポタミアを見ているんだよー」

林檎「え? 異次げ・・・え? ・・・どうして?」

40「どうしてもこうしても、女子は40歳まで処女だとその熟れた女子力によって時空を超えることができるようになるんだよ~。常識だよ~」

林檎「そ、そんなことが・・・!?」

40「時をかける処女」(キリッ)

林檎「・・・」(イラッ)

40「そんなわけで今日はここ古代メソポタミアから、どうしてこの文明が滅んでしまったのかを探りたいと思いま~す☆」



『古代メソポタミア文明って?』



林檎「メソポタミア文明の・・・滅、亡?」

40「そうだよ~。このメソポタミア文明は紀元前9000年くらいに始まった人類最古の文明なんだけど、シュメール人っていう人たちが作ったのね~? ここはそのシュメール人さんの作った都市で『ウル』っていいます。今でいうイラクにある都市です。知ってる~?」

林檎「聞いたことはありますけど・・・」

40「そんで、ここはウルの繁華街で~す。メソポタミアの原宿みたいなところで~す。いっぱい人がいるよね~」

林檎「そうですね」

40「シュメール人さんを見て、何かわかることはなぁい?」


         /彡イイノ彡三ニ-、_
        /彡彡ノノ彡彡彡トミミミミ、
       ィ=〒 ニ!ニニニニニー-、ト,
       |J|U |(_) |( _) |(__) |(⌒)fヘif|
      ァ┬┬┬ァ─--ニニー─-={
      /i|lリミi|l|彡 ──--、  ̄二_T
     ノノiイ⌒|lf   ニエエヽ ` 左=、/
     (((《j!{ 片jj、       '. |   |      超うめー
     {从iト、nj|l|li,      i   !   ノ
     `ヘl|j {fjl|l|li|i    _彡ニく イ
     _7∩{|l|li|ト,   '"-=辷ヾ、 l!_
   , 一i{ ヘ  {lj|li|l|lト,   ,ililili \ヽ>、二二ヽ
,-‐': : : : ヘヘ \ ヾj|l|l|l|l|l|lj卅|l从il(×r´ ̄⌒ ̄ヽ
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: : : : : : : : : ヘ }ト、 ̄`ー-----イイ ∧(_ヌ ̄`  )-、
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※通りすがりのシュメール人男性


林檎「まず、男の人は髭が生えていますね。それに、何かの肉を食べているけど・・・あれは何の肉なのかしら?」

40「・・・子供・・・」(ボソッ)

林檎「え?」

40「あれは羊の子供の肉だよ~☆」

林檎「羊・・・そういえば、着ている服もウールっぽいわね」

40「そうそう。つまりメソポタミア文明では、すでに羊を家畜として利用する方法が確立していたっていうことだよね~」

林檎「畜産が行われていたということですか?」

40「そうだね~。羊だけじゃなくって、ヤギさんや牛さんも育てていたんだよ~。お肉だけじゃなくってミルクも飲んでたんだね~」

林檎「そこまで進んでいたなんて・・・」

40「ところで木下さん、畜産をするうえで必要なモノって何だと思う~?」

林檎「動物と・・・餌、ですか?」

40「すご~い! 大正解だよ~! このあたりはもともと雨が降らない所だから、草もあんまり生えないんだよね~。だから放し飼いにするだけじゃ家畜は育たなくて、ちゃんと餌を作ってあげなくっちゃいけません。その餌が何だか、わかる~?」

林檎「家畜の餌・・・牧草? とか?」

40「そうそう。でも、それだけじゃないんだよ~」

林檎「?」

40「あそこにヒントがあります」


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※仕事上がりのシュメール人の皆さん


林檎「あれは・・・ビール?

40「そうだよ~。メソポタミアの人たちはビールが大好きだったんだよ~。ちなみに先生も大好きで、毎朝飲んでから学校に行ってま~す☆」

林檎「あれがヒント・・・あっ!」

40「わかった~?」

林檎「麦、です・・・か?」

40「ぴんぽ~ん♪ メソポタミアは麦の大産地なんだよ~。だから牧草だけじゃなくって、麦も家畜の餌にできたんだよね~。麦畑を使って、畑作と一緒に畜産もする。これを混合農業(こんごう・のうぎょう)って言います」

林檎「家畜も畑で飼ってるんですか?」

40「そうだね~。そうすれば、牛を使って畑をどんどん耕せるし、動物のウンコが肥料になるでしょ~? 家畜を飼うスペースは休ませてる麦畑でいいし、牧草が足りなければ麦をあげればいいし、管理するにも便利だしで、とっても効率がいいんだよ~」

林檎「よくできてるんですね・・・」

40「それもこれも、メチャメチャ麦が採れるからなんだけどね~。1粒植えるとMAXで80粒くらいできたんだって~」

林檎「それって多いんですか?」

40「19世紀ヨーロッパだと5粒くらいで、現代のアメリカでも20粒くらいだからね~。パないよね~」

林檎「それは・・・パないですね。それだけ採れれば動物にあげようって気にもなるかも・・・」

40「このめがっさすごい麦の収穫量が、メソポタミア文明の原動力になったんだよ~」

林檎「メソポタミアの文明を支えているのは麦・・・つまり、畑作農業?」

40「そうなんだよ~! そしてその農業を支えているのが、灌漑(かんがい)っていう技術なんだよ~!」

林檎「かん・・・がい?」

40「知ってる?」

林檎「言葉は聞いたことがありますけど・・・水を引く技術? でした?」

40「じゃあ、実際に見に行ってみようか~。えーい☆」

   ・
   
   ・

   ・
    
   ・

林檎「えっ!? こ、ここはどこ? っていうか、今なにを・・・?」

40「テレポーテーションだよ~。心の翼で時空を跳んだんだよ~」

林檎「そんな芸当まで・・・」



『灌漑 ~破滅へのトリガー~』



40「ここはウル近郊の畑です。どう?」

林檎「すごいです・・・水路とかしっかり作ってあって、学校の農場と比べても、ぜんぜん劣ってない・・・」

40「このあたりはあんまり雨が降らないんだけど、遙かなるチグリス・ユーフラテス川の下流で、いっぱい洪水が起こるのね? 毎年ノアの大洪水なのね? そうやっていっぱい流れてきた水を溜池にためておいて、その水を水路を使って畑に分配するシステムが完成してるんだよね~」

林檎「それが灌漑ですか?」

40「か・ん・が・い☆」

林檎「・・・」(イラッ)

40「でも、この灌漑こそがメソポタミア文明を滅ぼしてしまったんだよ~」

林檎「え!? でも、この灌漑があるからこそ、メソポタミアは栄えているんでしょう? それがどうして滅亡の原因になるんですか?」

40「じゃあ、もうちょっと先の時代を見てみようか。えーい☆」


 ~ だいたい300年後 ~


40「どうかな~? これがさっきと同じ畑なんだけど~?」

林檎「こ、これは・・・土がカサカサにひび割れて、白い粉を吹いてるわ・・・・・・まるでベッキー先生の肌のように!!」

40「・・・・・・」

林檎「ああ・・・どうしてこんなことに・・・? この地肌に吹き出ている白いものは・・・?」

40「それは集積塩。つまりお塩だね~」

林檎「・・・塩?」

40「そう。これこそがメソポタミアを滅ぼしてしまった真の原因・・・大規模な灌漑によってもたらされた塩類集積。つまり『塩害』だよ~」

林檎「え? でも海の水を使ってるわけでもないのに、どうして塩が吹き出るんですか?」

40「灌漑をすることによって、地下から汲み上げられてくるんだよー」

林檎「さっぱり意味がわからないんですが・・・」

40「う~ん、先生も難しすぎて説明できる自信はないんだよね~。だから丸投げしちゃいます!」

林檎「え?」

40「下のサイトを見てください☆」


塩類集積について非常にわかりやすい説明をしてくれるサイト
鳥取大学乾燥地研究センターさま
『砂漠化の原因って?』


林檎「乾燥地研究センターなんてあるんだ・・・さすが鳥取・・・砂丘の国・・・」

40「どう? わかりやすいでしょ~?」

林檎「そうですね。要するに、灌漑によって畑に入れた水が、地下にある塩を含んだ水を地表まで吸い上げてしまうということですよね?」

40「そうだね~」

林檎「でも、どうして地下にある水を吸い上げることができるのかが、よくわからないんですけど。『毛細管現象』でそうなるって書いてありますけど、これはどういうものなんですか?」

40「この原理を説明することは、とっっっても難しいんだよ~。だから感覚として理解してほしいんだけど、身近な所で説明すると、植物が根っこから水を吸い上げる力もこの原理を使ってるんだね~」

林檎「・・・」

40「他にも、マジックペンのペン先とかね。要するに、繊維みたいに細い管を伝うことによって、重力に逆らうことができるんだよ~」

林檎「・・・土の中にも細い管みたいな空間があって、そこを水が伝ってくるんですか?」

40「イエスでおじゃりま~す☆ ここのサイトにある動画を見るとイメージしやすいかもね~☆」


毛細管現象についてすごくわかりやすい動画のあるサイト
テイボー株式会社さま
『毛細管現象とは?』


林檎「あ、これすごくわかりやすいです」

40「原理はよくわかんないけど~、こういう感じで上がってくるというね!」

林檎「それで、地表に塩が溜まってしまって・・・」

40「うん。地面に塩が溜まると、植物は枯れちゃいます。塩に強い作物もあるんだけど、それだけじゃ、増えすぎたメソポタミアの人々を支えることはできなかったんだね」

林檎「そして、人々は土地を捨て、文明は滅び去った・・・」

40「これは数千年前のお話だけど、今も同じような塩害は世界各地で発生し続けてるんだよね。エジプトでもアメリカでも、大規模な灌漑による砂漠化は深刻です。日本だって、この先どうなるかわかりません。地球規模の環境の変化に柔軟に対応して行かないと、今の文明も案外あっさり滅んじゃうかもね~☆」

林檎「・・・先生」

40「ん~? どうしたの~?」

林檎「メソポタミアの人たちは、文明が滅ぶほど悪いことをしたんでしょうか? わたしたちみたいに原子力を使ったり石油を燃やしたりせずに、ただ素朴に農業をしていただけなのに・・・」

40「確かにそうだけどー、そもそも農業やること自体が環境破壊だしねー」

林檎「それは・・・そうかもしれませんけど・・・」

40「それに、大規模にやりすぎちゃったっていうのもあると思うんだよね~。少なくとも灌漑さえしなきゃ、あそこまで急激に砂漠化しなかったと思うよ~?」

林檎「どうすればよかったんでしょうか?」

40「どうなんだろうね~? 結局、メソポタミアの大地が支え切れないほどに人の数が増えてしまったってことだと思うんだけどね~」

林檎「みんなが先生みたいだったら、人口も増えずにすむんですけどね」

40「・・・」

林檎「先生」

40「どうしたの~?」

林檎「最後に、もう一つだけ教えてくれませんか?」

40「なにを~?」

林檎「先生って・・・何の教科の先生なんですか?」

40「ひ・み・ちゅ☆」



 次回更新は10月24日の予定ですが
 前日に雨が降ったりしたら更新しないかもしれません。
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by thurinus | 2011-10-10 20:00 | SS

第4回 害獣殲滅計画


耕作「大分県豊後大野市の市長さんが発表した『害獣が増えたからオオカミを放つぜー』っていう主張には何となく惹かれるものがあります。畑耕作です」

良田「良田胡蝶だ。・・・おい俗物、のっけから何を言っている?」

耕作「もう限界なんだよ!!」

良田「!?」

耕作「害獣だよ害獣! あの動物ども調子に乗りやがって! 絶滅させたろか!?」

良田「お、落ち着け畑耕作! 以前に猿を捕獲したとき、我々で野生動物と人間の共存を模索すると誓ったではないか! 忘れたのか!?」(1巻第8限参照)

耕作「ペェッ!!」(←ツバを吐く)

良田「!?」

耕作「良田さんこそ何にもわかっちゃいない! もう事態はそれどころじゃないところまで進んでるんだよ! 限界超えてんだよ!!」

良田「し、しかし・・・私は諦めんぞ! 人間も自然の一部である以上、動物と人間は必ずや共存できるはずだ!」

耕作「まだそんな甘っちょろいこと言ってんのか! そんな夢や希望ばっかり胸に抱いてるから止めどなくおっぱいが大きくなるんだ! このおっぱい!!」

良田「む、胸は関係ないだろう!!」

耕作「だいたい良田さん、偉そうなこと言ってるけど状況理解してるの? 去年の岐阜県の被害総額がどれだけか知ってる?」

良田「どれだけなのだ?」

耕作「四億円です」

良田「よ・・・」

耕作「もうね、共存とか無理。っていうか、駆除するのも限界っぽい。そもそも農家は普段の農作業だけで手一杯なのに、そこにさらに害獣の駆除なんて手が回るわけがないじゃん? せいぜい電動銃とかヒトシくん使って追い払うくらいが精一杯だって」

良田「・・・私も気になっていたし読者からも質問が来ているのだが、あの『ヒトシくん』とやらは実在する道具なのか?」

耕作「します。実在します。奈良県果樹振興センターの赤土仁志(しゃくど・ひとし)主任研究員さんが開発したので、開発者の名前を取って『ヒトシくん』と名付けられました」

良田「意外と安直な・・・」

耕作「種子島で製造されたから鉄砲が『種子島』と呼ばれたようなね。そしてこのヒトシくんも、戦国時代に爆発的に広まった種子島のように日本全土に爆発的に広がっていきました。ちなみに正式名称には『2号』がつくけど、これは多分あれなんだろうね、モビルスーツで例えるとザクみたいな感じなんだろうね。旧ザクと普通のザクみたいなね」

良田「ネットなどで検索してみると、本当に全国に広がっているのだな・・・しかも各県で微妙にアレンジされているし・・・」

耕作「モビルスーツに例えるとジムみたいなね。用途や地形なんかに合わせて複数のバリエーションを用意する的なね。まあネットで検索するとヒトシくん人形ばっかヒットしちゃうんだけど、とにかくこうして農家は害獣と戦うために日夜工夫を凝らしてるわけですよ」

良田「ふむ・・・」

耕作「でもね、それでも足りない。全然追いつかない。人間がいくらイロイロ考えても、動物はもっと多彩な方法で攻めてくるから。っていうかそもそも害獣って何種類もいるから」

良田「そうだな。サルだけではなく、イノシシやカラスなども害獣に含まれるな」

耕作「そう。そんで、それぞれ好きな作物や習性なんかも違ってくるから。農家はその全てに対策を立てなきゃいけないんだから、もうやってらんないって事になる。『オオカミ放って食い尽くしてもらおうぜ』って主張も『素敵やん?』ってなる」

良田「いや・・・それはさすがにイカンだろう? オオカミが野生化したらどうする? 作物どころか人間が食われるぞ?」

耕作「うん。まあそうなんだけどね」

良田「冷静になれ」

耕作「うん・・・」

良田「気持ちはわかるが、現実的な解決方法を模索すべきだろう」

耕作「で、でも! オオカミを放つのだって現実的な提案なんだよ!? 『日本オオカミ協会』の皆さんだってそう言ってるもん!」

良田「日本オオカミ協会!?」

耕作「ホームページもあります」

良田「すごいカッコイイではないか!」

耕作「本も出てるんだよ?」

 ストレート過ぎるタイトルの普及書

良田「た、確かに圧倒されるが・・・やはり現実的ではないだろう。日本オオカミ協会の活動には敬意を表するが、そうすぐにオオカミのイメージが変わるとも思えん。今オオカミを放とうとしても、住民の反対意見が大きすぎて実現は不可能だろう」

耕作「・・・・・・」

良田「今できることを探そうではないか」

耕作「・・・そうだね。ごめんね良田さん? 今日のぼく、絡みづらかったでしょ?」

良田「気にするな。それよりも、害獣についてもっと詳しいことを教えてくれ。我が県で最も被害額の大きなのはどれだ?」

耕作「イノシシです。断然イノシシ。1億7千万円」

良田「半分弱がイノシシとはな・・・次は?」

耕作「次がサル。5600万円。その下に横並びでシカカラスカモシカと来て、それぞれ3千万円くらい。で、ヌートリアハクビシンアライグマラスカルと続くわけ」

良田「カモシカも? 天然記念物だろう?」

耕作「だからタチが悪い。駆除したら何となくマズイみたいな感じするし、可哀想だから殺すなみたいなことも言われるから」

良田「まあ・・・そうだろうな」

耕作「そりゃ可哀想だよ。ぼくだってそう思うよ? でもじゃあ、どうしろってのさ? 殺すなって言う人が山に住んでカモシカ追い払ってくれるわけ?」

良田「無理だろうな」

耕作「そう。無理なわけ。まあカモシカによる主な被害は林業方面で、ぼくは林業やってないからカモシカの駆除とかにはかかわったことないんだけど・・・だからこそ、余計な口は挟めないと思うんだよ。最前線で戦ってる人に、安全な場所から無責任なことを言うようなことはしたくないし」

良田「そうだな。被害を受けていない街に住む人々も、きっと街中にまでカモシカが来るような事態になれば『駆除をしろ』と言うようになるだろう。それは想像に難くない未来だ」

耕作「最近だと街にもクマが出たりとかニュースになってるけど、そうならないように田舎の農家が苦労してるって事は憶えてて欲しいよね」

良田「確かに」

耕作「それに・・・害獣って農家だけが被害を受けてるように思いがちだけど、実は国民全員に関係のあることなんだよ」

良田「どういう意味だ?」

耕作「『農業災害補填法』って知ってる?」

良田「あ? ああ・・・確か、農業共済の根拠になっている法律だな? 災害などで作物がダメになった場合、その損害を補填してくれるという・・・」

耕作「そう。共済だから、農家がお金を出し合って損害を補填しようっていう、いわば保険みたいなもんなわけだけど・・・これ実は半分が国のお金です。みなさんの税金です」

良田「なっ!?」

耕作「全てのケースで適用されるってわけじゃないみたいだけどね。でもさ、考えてみてよ。鳥獣害で作物の生産量が減少したとすると、供給が減るわけだから作物の価格は上昇するよね? そうなるとやっぱり消費者の負担は増えるわけ。それだけお母さんのお財布が軽くなるわけ」

良田「むぅ・・・」

耕作「そういうふうに考えていくと、害獣対策ってのは日本人全員が考えていかなきゃいけない問題だし、できることを見つけて行動していくべきだと思うんだよね。できる範囲でね」

良田「しかし・・・我々のような農業従事者ならまだしも、街中で暮らす一般市民に何ができるというのだ?」

耕作「まあ考えれば色々と出てくるとは思うけど、そうだなー・・・まず第一に、休日に田舎にバーベキューとかに行ったとき生ゴミや食べ物を放置しないことだね。これ餌付けと一緒だから」

良田「それは当然のことだと思うが・・・」

耕作「その当然ができてない。他にも、墓参りのお供え物とかね。これは意外と盲点なんだけど、こういうのを放置して帰るのもできれば自粛して欲しいよね。こういう所で餌を食べて人に慣れた動物は、どんどん行動が大胆になってくから」

良田「一度人間の食べ物の味を憶えた動物は、次々と他の食べ物にも手を出していくからな。そして栄養状態がよくなって個体数も激増するし、そうなると山だけでは暮らせなくなって人里にも降りてくる・・・悪循環だな」

耕作「この負の連鎖を断ち切るためには、やっぱり守ってるだけじゃダメなんだよ。攻撃的防御に転じないと」

良田「攻撃的防御?」

耕作「でまあ、最初の話に戻るんですが」

良田「最初というと・・・オオカミの話か? だから、さすがにそれは荒唐無稽すぎ――」

耕作「いや、犬でいいんじゃないかと」

良田「あ?」

耕作「犬で」

良田「・・・?」

耕作「だからさ。オオカミは無理でも、犬なら普通にみんな飼えるわけでしょ? だったら犬を訓練して、猿を追い払うようにすればいいじゃん。ほら、犬って頭いいし人懐っこいし。ちゃんと訓練してやれば、オオカミみたいに人間襲うって危険もほとんどないわけでしょ?」

良田「あっ! た、確かに・・・」

耕作「で、実際もうあります。モンキードッグ

良田「モンキードッグ!?」

耕作「そうモンキードッグ。これは盲導犬、介助犬、警察犬に続く、新たなる『働く犬』になるね。もう訓練所まで設置されてて、厳しい訓練をくぐり抜けてきたエリートドッグのみが山に放たれているのさ」

良田「放し飼いにしてもいいのか?」

耕作「そういう許可が出るらしいね。もちろん、ちゃんと訓練を受けて、試験に合格した犬だけが認められるわけだけど」

良田「ふむ・・・確かに犬は頭がいい動物だし、家畜の中では断然人に慣れやすく、飼いやすい。ちゃんと訓練を受けているのであれば大丈夫・・・か?」

耕作「青森県のむつ市だと、モンキードッグのおかげで被害が7割も減少したって報告があるくらいだからね! 効果は実証されてるよ!」

良田「ほう! それは素晴らしい成果ではないか!」

耕作「犬だけじゃなくて、ヤギでも効果があるって報告も上がってきてるから。どんな動物でもいいから、何かが畑にいるっていう状態を作ることが大切なのかもね」

良田「牛でもいいわけか?」

耕作「いいんじゃない? 牛って大きいし、けっこうでっかい声で鳴くし」

良田「では私は牛を使った害獣対策について考えてみるとしよう!」

耕作「期待してます」

良田「・・・ところで畑耕作」

耕作「なぁに?」

良田「『どんな動物でもいい』ということは、もちろん人間もそこに含まれるのだよな?」

耕作「まあ、だろうね」

良田「人間がいつも畑にいれば、動物もめったなことはしないのだろうな」

耕作「と、思うけど?」

良田「つまり動物たちが山から下りて来るようになったのは、農村に人がいなくなったから・・・ということにはならないか?」

耕作「結局そこに行き着くんだよなあ・・・」


 次回更新は10月10日です。
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by thurinus | 2011-09-26 19:00 | SS

第3回 わらびー

耕作「はーい! 4週間ぶりのこんにちは、畑耕作です。今回は林檎ちゃんと一緒に、ワラビーについて語ってみたいと思います。ほら林檎ちゃん、みんなにご挨拶して?」

林檎「・・・」

耕作「?」

林檎「・・・」

耕作「ど、どうしたの?」

林檎「・・・」

耕作「え? なんか・・・怒ってる?」

林檎「耕作」

耕作「は、はい?」

林檎「わたし、メインヒロインだよね?」

耕作「そ、そうだと思うけど・・・1巻で表紙だったし・・・」

林檎「メインヒロインなのに、どうして今頃やっと出番が回ってくるの?」

耕作「ど・・・どうして・・・・・・と、言われましても・・・」

林檎「普通、一番はじめに主人公とヒロインの出番があって、それから過真鳥くんとかデカ尻さんとかの出番があるべきじゃない? 違う?」

耕作「いや・・・うん・・・」

林檎「おっぱいさんなんて、準レギュラーなのよ?」

耕作「(ぶっちゃけ単独では絡みづらいから、とは言いづらい・・・)」

林檎「ちゃんと理由を説明して」

耕作「そ、それは・・・そう! このブログは、本編であんまり目立てなかった人にスポットを当てるって意味を持ってるからなんだよ!」

林檎「・・・?」

耕作「もちろん商業的なことを考えれば、林檎ちゃんの出番がいっぱいあったほうがいいに決まってるよ? 当たり前ジャン! でもこのブログは非営利だから! 作者の趣味だから! マイナーキャラを活躍させてあげたいっていう親心? 的な? そういうのがあるんだよ!!」

林檎「・・・」

耕作「わ・・・わかって、くれ・・・た?」

林檎「・・・」(こくん)

耕作「じゃあ・・・ほら、ご挨拶して? 今日は林檎ちゃんの大好きなワラビーのお話をするからね? だっこしてる若旦那のぶんも・・・ね?」」

林檎「ニッポンノミナサン、コニチワー」

耕作「・・・?」

林檎「代弁してみた」

耕作「ワラビーの!?」



『なんで若旦那?』



耕作「それで、ワラビーの話なわけだけど」

林檎「うん」

耕作「林檎ちゃんはもちろんワラビーのこと知ってるよね?」

林檎「埼玉県蕨(わらび)市のマスコットのことでしょう?」

耕作「違うよ!! 合ってるけど違うよ!!」

林檎「ちなみにこれ↓です」

 蕨市マスコット『ワラビー』(平成元年制定)

耕作「まあ確かに蕨市は全市を挙げてワラビー押してるっていうか、ワラビー歯科とかワラビークリニックとかもあるけど・・・」

林檎「わらびー餅は?」

耕作「あるよ!!」(高知県のいち動物公園内レストラン『ラクーン』さんに実在。¥400ナリ)

林檎「そろそろ本題に入りましょう」

耕作「・・・えーっと、ワラビーっていうのはカンガルーの小っちゃいやつです。いろいろ種類があるんだけど、うちの学校で飼ってるのは『ダマヤブワラビー』っていう種類で、本当に小型のカンガルーそのものって感じだね。名前は『若旦那(わかだんな)』で、学校公認マスコットとして愛されています」

林檎「どうして『若旦那』って名前なの?」

耕作「あー、それは取材先の学校さんで飼ってるワラビーの名前が若旦那だったからだねー」

林檎「・・・」

耕作「あまりにも素晴らしいセンスだったから」

林檎「じゃあ、リアルでも若旦那がいるわけ?」

耕作「リアル若旦那はもう死んだよ」

林檎「!?」

耕作「ほら、あの話おぼえてる? ぼくが冬の寒い日に若旦那を保護したって話」

林檎「おぼえてるけど・・・」

耕作「あれは作者が実際に取材した話を元にしてるんだ」

林檎「・・・じゃあ、リアル若旦那も寒くて倒れてたの?」

耕作「もちろん細部は違うよ? ワラビーの世話をしてたT橋くんっていう生徒さんに話を聞けたんで、それを元にして話を組み立てたんだけど・・・」

林檎「けど?」

耕作「リアル若旦那はそのときの衰弱がもとで、死んじゃいました。本編みたいに助かりませんでした」

林檎「・・・若旦那!」

耕作「朝、当番実習にやって来たT橋くんがワラビーハウスの中を見ると、寒さに凍えて地面に倒れている若旦那の姿が・・・」

林檎「どうして・・・?」

耕作「ワラビーハウスには冬の寒さをしのぐためのエアコンとホットカーペットが用意されてるんだけど、どうやら年を取って弱ってた若旦那は、自分の息子達にそこから追い出されちゃったらしいんだよね」

林檎「若旦那・・・かわいそう・・・」

耕作「どーぶつだからね。仕方ないよ」

林檎「それで死んじゃったの・・・?」

耕作「いや。T橋くんが助けだして、教官室で毛布に包んだりして懸命に看護をしたんだ。そのかいあって一度は回復したんだけど・・・」

林檎「・・・死んじゃったの?」

耕作「死んじゃった」

林檎「・・・」

耕作「だから本編で出てくる若旦那は、そのときの若旦那がもし生きてたら・・・こんなワラビーがいてくれたら・・・あんなこといいな、できたらいいな・・・っていう、作者の夢とか理想とかが反映されてるんだよ」



『リアルなワラビーって、どんなの?』



耕作「そういうわけで今回は、そういった理想化されたワラビーじゃなくて、リアルなワラビーはどんな感じかってのをお話ししたいと思います」

林檎「リアルな・・・?」

耕作「今、林檎ちゃんは若旦那を抱っこしてるよね?」

林檎「うん」

耕作「ワラビーは基本的に野生動物だから、人間には懐きません」

林檎「!! ・・・逃げられた」

耕作「それでいいんだよ。あんまり触ろうとするとストレスで弱っちゃうからね」

林檎「でも・・・ペットとして売ってるんでしょう? 小さな頃から育てれば・・・」

耕作「まあ大丈夫な子もいるだろうけど、やっぱりストレスは溜まるんじゃないかなー? それでなくても日本で生活するだけでワラビーにはすっごいストレスが溜まるんだから」

林檎「ストレス?」

耕作「日本でワラビーを飼うのは本当に大変なんだ。取材先の学校さんでも、最初は全滅させちゃったから」

林檎「全滅・・・」

耕作「まず、日本の気候が合わないんだよね。夏は蒸し暑くて冬はギンギンに冷えるもん。だったら部屋の中で飼えばいいじゃないかって思うかもしれないけど、ワラビーは基本的にジャンプ移動するからね。狭い場所だとこれまたストレスが溜まるし」

林檎「じゃあ・・・ワラビーが跳ね回れるほど大きな敷地と、暑さや寒さをしのげるハウスがあればいいの?」

耕作「そうだね。そういう環境が整ってて、無理やり人に慣れさせないでおこうと思えば、それなりに飼いやすい動物ではあるかな? 吠えないし」

林檎「食べ物は?」

耕作「カットした野菜、特にサツマイモとかニンジンが好きみたいだね。それから忘れちゃいけないのがワラビーフード! 犬とか猫のカリカリみたいなやつなんだけど、これをちゃんと食べさせるのがポイントだよ!」

林檎「野菜・・・カリカリ・・・」(メモメモ)

耕作「取材先の学校の畜産の先生も、『飼育の成功はワラビーフードが決め手』って言ってたくらいだからね!」

林檎「ワラビーフードはどこで買えるの?」

耕作「ワラビーを取り扱ってるペットショップさんなら置いてるから、飼うときに一緒に買ったらいいと思うよ」

林檎「・・・そもそもワラビーって、ペットショップで売っているの?」

耕作「売ってるみたいだね。ネットで調べると結構出てくるし」

林檎「個人で飼ってる人・・・いる?」

耕作「いるよー。この『愛ちゃん』とか」


 愛ちゃん


林檎「はぅぅ~・・・あ、愛ちゃん、カワユスぅ・・・!」

耕作「呼ぶと来るとか、手から餌を食べてくれるとか、かなり人慣れしてるよね。愛情を持って飼育した証拠だよ」

林檎「トップブリーダー。トップブリーダー」

耕作「この動画を見るとわかるけど、ワラビーは移動するとき必ずジャンプするわけじゃないんだ」

林檎「ほんとだ・・・! 前脚を使って歩いてる・・・の?」

耕作「そうそう。他にもジャンプの仕方とかにも違いがあって、ちょっと横方向にジャンプ移動するときは、バランスを取るために前脚を横に開いたりもするんだよー」

林檎「奥が深い・・・」

耕作「ワラビーは動物園とかにもいたりするし、好きになった人は観察してみるのもいいんじゃないかな」

林檎「・・・でも」

耕作「でも?」

林檎「・・・やっぱり家で飼いたい・・・っ!!」

耕作「うーん・・・そういう気持ちもよくわかるし、お金さえ払えるのならそれを誰かが止めることはできないんだけど・・・」

林檎「けど?」

耕作「ちゃんと飼えない動物を無理して飼うことは、その動物を不幸にすると共に・・・自分以外の多くの人にも迷惑をかける可能性があることを忘れないで欲しいんだ」

林檎「自分以外って・・・家族、とか?」

耕作「その答えは次回に譲ろうか。次の更新は2週間後の9月26日。『害獣』について、ぼくと良田さんでお送りします」

林檎「むずかしい話になる予感・・・!」
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by thurinus | 2011-09-12 06:54 | SS

第2回 アイラブ牛(ぎゅう)からはじめよう

農「暑中お見舞い申し上げます! 中沢農っす!」

良田「良田胡蝶だ」

農「今回は牛のことについて、あたしら二人でお届けしまっす!!」

良田「おい」

農「何やの?」

良田「どうしておまえは名前の表記が『農』で、私は『良田』なのだ? 名前で統一するなら『胡蝶』だろう?」

農「いっきなりメタな話題振ってくるなー・・・。ま、本編準拠っちゅーか、『のうりん』の中ではあんたいっつも良田って表記されとるやん? やもんで下の名前は知らん人が多いかも、ってことなんやら」

良田「ふん! 気に食わんな・・・」

農「じゃあ消えろよ」

良田「!?」

農「消えろよ」

良田「(いつもと性格が違う・・・!?)」

農「・・・ったく。こっちだってさー、てっきりコーたんと二人でと思っとったのに、お嬢なんかと組まされてさー・・・」

良田「う、うむ・・・。さ、災難だったな・・・お互いに・・・」

農「何か面白いことやれや」

良田「・・・はぁ?」

農「つまらんから、何か面白いことやって。盛り上げて。この場を」

良田「い、いや・・・そんなことを言われても・・・」

農「だいたいあんた、最初の挨拶は何やのアレ? なんでもっと愛想よくできんの? 仕事ナメとるの?」

良田「そういうわけでは・・・」

農「ほんなら『巨乳お見舞い申し上げます』って言って」

良田「なっ!?」

農「やれよ」

良田「・・・きょ・・・・・・きょにゅう、お見舞い・・・もうしあげます・・・」



『牛ってホントに脱走するの?』



農「ほんで、牛の話なんやけどね?」

良田「な、何だ? 何でも聞け・・・聞いてくれ」(ドキドキ)

農「本編第0限で、脱走した牛が走ってくるシーンがあるけどさー。ああいうのってホントにあるわけ?」

良田「ふむ」

農「どーやの?」

良田「結論から言えば、ほとんどない」

農「なんでーさ?」

良田「牛は基本的に大人しい生き物だ。特に肥育牛は普段からケージの中で飼われているから、あまり激しくは動かない。というか、動けない。太ってるからな」

農「ほんなら走ったりはしーへんの?」

良田「いや、そんなこともないな。たとえば放牧して飼う牛になると、ある程度野生化して人間を見ると全力疾走して逃げるようになったりもするようだ」

農「ふむー」

良田「ケージ飼いの肥育牛でも、放牧場などの広い場所で放し飼いにしてやると、喜んで走ったり飛び跳ねたりもする」

農「ふーん」

良田「ただ、ケージで飼っている牛の場合、そのまま走って脱走したりはしないということだ。まあする場合も全くないとは言わんが、ずっと全力疾走を続けるということはないだろう。闘牛のイメージがあるから、そんな印象があるのかもしれんが」

農「ほんなら、どんな感じで脱走するの?」

良田「トコトコ歩いて脱走する」

農「脱走・・・っちゅうか、脱歩?」

良田「おそらく、牛には逃げているという意識は無いのだろうな。散歩しているうちに帰れなくなってしまうというか、まあそんなところだろう」

農「そもそもどーして脱走なんかできるわけ? 綱かなんかで繋がれとるんやら?」

良田「その綱が切れたとき、牛の世界は無限に広がるのだ・・・」

農「取材先の学校さんでも、ほーゆうことってあったんかな?」

良田「作者が聞いたところでは、二年ほど前に一度あったそうだ。いつの間にかケージから牛が一頭消えていて、慌てて全校放送で『牛が逃げました! 探してください!』とやったらしい」

農「で? 見つかったわけ?」

良田「裏門の辺りを歩いているのを練習中の野球部員が発見し、角を掴んで止めたそうだ。チームプレイで」

農「ツノ・・・」

良田「危ないので、そういう場合は触らずに監視しつつ、牛の扱いに慣れた人を呼んだほうがいいだろう」

農「まあ、普通に生活しとって牛の脱走に出くわす場面とかは絶対あらへんやろーけどね……」




『牛の値段は?』




農「ほんで、こっからが今回の本題なんやけど」

良田「うむ」

農「牛ってだいたい、どんくらーで売れるの?」

良田「・・・」

農「ほら、あんた牛の揚羽ちゃんを教室に連れてきたとき、『揚羽の予想落札価格は1600万円だ』ってエラソーなこと言っとったやん? ほんとにあんな高ーわけ?」

良田「・・・・・・」

農「どーやの?」

良田「・・・・・・・・・」

農「ねえ?」

良田「・・・・・・・・・80まんえん

農「・・・はあ?」

良田「・・・だいたい・・・はちじゅうまんえん・・・くらい・・・」

農「はあっ!?」

良田「ちょ、ちょっと見栄を張ってしまったかな。うむ」

農「どこがちょっとやの!? ゼロが2個違うやん!!」

良田「い、言っておくが、80万というのも相当なのだぞ!? リーマンショックのときはもっと安かったし・・・そもそもハンバーガーとかになっている牛の値段は、それより遥かに安いのだからな!」

農「ほんでもさー、うちの学校で作っとる牛ってアレやら? 飛騨牛なんやら? ブランドもんでもその程度やの? なんかガッカリ・・・」

良田「田分け者ッ!!」

農「!?」

良田「飛騨牛というブランドは我が岐阜県の先人たちが汗と涙と牛糞にまみれて築き上げた掛け替えのない宝物だ! よくもそれを『ガッカリ』などと・・・岐阜県民として恥を知れ! 俗物ッ!」

農「ご、ごめんな・・・さい・・・?」

良田「ここを見て勉強しろ。俗物」

農「へー、セリの値段とかも書いてあるんやねー?」(※牛枝肉相場の項目参照)

良田「ちなみに史上最も高価な牛は、一頭5000万円という値がついたこともあるのだ!」

農「5000万!? ほ、ほれは・・・どこのお牛さまやの・・・?」

良田「松阪牛だ」

農「飛騨牛やないやん!」

良田「平成14年の共進会でなー。いやー、あれはすごかった。興奮した」

農「あんたまだ小学生やら!」

良田「だが! たとえバブルが弾け、リーマンショックが起こり、東日本大震災によって壊滅的被害をこうむろうとも、素晴らしい牛を育て続ければそれはきっと正しく評価される! そしてその評価を下す場所が・・・あそこだっ!」(西を指さしながら)

農「どこ!?」

良田「五年に一度、この日本のどこかで開催される我が国最大の牛の祭典・・・全国から最強の牛500頭とそのブリーダーが県畜産界の威信を背負って集う、まさに牛の天下一武道会・・・ロマンを掴み取れ、天下一・・・!」

農「そ、その牛の祭典とは・・・?」

良田「全国和牛能力共進会――別名『和牛のオリンピック』!!」

農「和牛のオリンピック!?」

良田「そうだ! 前回は鳥取で、その前は我が岐阜県で行われた! 次は来年2012年に長崎ハウステンボスで開かれる!!」

農「ハウステンボスで!?」

良田「そうだハウステンボスだ! その大舞台で最優秀賞を受賞すれば、何千万という値がついてもおかしくはない!」

農「た、確かに・・・名実ともに日本最高の牛になるわけやしねえ」

良田「事実、飛騨牛は肉の質を比べる部門で2回連続最優秀賞を受賞して『肉質日本一』の評価を不動のものとし、そのときの肉は1キロ当たり10万飛んで6千100円という驚異的な値段で落札されているのだ!」

農「キロ10万って・・・100グラムいちまんえん!? なんつーお肉やの!?」

良田「そもそも共進会などで優勝した牛には、ご祝儀価格ということで相場を超えた高値がつけられることが多いのだ。値段の高さはブランドイメージに直結するからな」

農「な、なるほろ~・・・確かに『日本一お高い牛!』って肩書きがあったら、それだけで美味しく感じてまう自信あるわー」

良田「贈答品としても箔がつくからな! そして揚羽はその和牛のオリンピックで優勝すべく私が手塩にかけて育てている最高の牛だ! 必ずや天下一となり、最高の価格で落札されることとなるであろう!」

農「にゃーる。ほんで1600万円とか、相場の20倍の値段を口走ってまったわけやのね?」

良田「まあそういうことだ。実際のところ、全共(全国和牛能力共進会の圧縮表記)で日本一になれば、それ以上の値がつく可能性も十分にあるからな」

農「優勝めざしてガンバロー!」

良田「ちなみに全共のホームページも存在する。興味があったら見るがいい」


※ ここです 


 大会テーマ
『和牛維新! 地域で伸ばそう生産力 築こう豊かな食文化』



農「ほんなわけで、そろそろさよならの時間です。次回更新は二週間後の9月12日、ワラビーについて、コーサクと木下さんが解説・・・ええっ!?」

良田「どうした中沢農?」

農「どーしたもこーしたもあらすか! な、なんであたしはお嬢とで、木下さんはコーたんと一緒やの!? 不公平やら!!」

良田「知るか! わ、私だって貴様などではなく、過ま――――こら何を言わせるのだ貴様!?」

林檎「次回をお楽しみにネ!」

農&良田「「ぜんぶ持ってかれたッ!?」」
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by thurinus | 2011-08-29 21:33 | SS

第1回 ごあいさつ&人生初SS

耕作「どうも! 畑耕作です!!」

継「過真鳥継だ」

耕作「いやー、ついに発売しましたね『のうりん』1巻! 継はもう読んだ?」

継「もちろんだとも。俺の肉体美が存分に発揮されていたな!」

耕作「・・・あの見開きカラーは継が全部持ってったよね・・・放課後電磁波クラブとか言われて・・・」

継「本当は映画『ボラット ~栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習~』ネタだったんだがな」

耕作「あー、あの完全ノーカット版なりきりBOXに付いてた付録の水着・・・」


※ これです 


耕作「まったく・・・継があんなの着てるから、作品そのものも『変態おバカラノベ』とか『今月のラノベに頭おかしいのが混ざってる』とか言われちゃうんだよ!?」

継「おまえだって似たようなことをしていただろう。ガイアがどうとか」

耕作「アレは違うよ! 激モテ秘技だよ!!」

継「そうなのか?」

耕作「そうなの! で、まあその、本題に戻るけどさ・・・今回から、『のうりん』の本編では書ききれなかった部分、言葉が足りなかったり農業的にウソをついてある部分なんかについて、このブログでいいわけ解説していきます!」

継「パラパラと読んでみたが、かなりの量のウソが含まれているな。まあ創作上の必要性からわざと改変したものもあるようだが・・・」

耕作「そのあたりの事について、このブログで補完しようって趣旨みたいだね」

継「ふむ」

耕作「あとがきは謝辞で埋まっちゃったし、他に場所がないんだって」

継「誠意があるのか無いのかよくわからない対応だな」

耕作「せっかくなんで、作者が語るんじゃなくて、ぼくたちが出張してトーク形式で進めていきます」

継「SSというやつだな」

耕作「作者の人生においてこれが初のSSなので至らない部分もあるでしょうが、おまけ短編でも読むような感じで楽しんでいただければ幸いです」

継「メタ的な発言も飛び出すだろうから、本編の雰囲気を損ないたくないという人は回避を推奨する」

耕作「ってなわけで、さっそく本題に入ろうか。今回のお題は・・・・・・こちら!」



『現実の農業高校って、どんな感じ?』



耕作「ぼくは農家の子供だったし、そもそも地元の学校だから入る前からだいたい想像ついてたけど・・・継は非農家出身だよね?」

継「ん? ・・・ああ、そうだ」

耕作「農業高校について、どんなイメージ持ってた?」

継「やはり農家の跡取りが多いというイメージだろうか? あと、朝から晩までずっと農作業をしているとか」

耕作「で、入ってみたら?」

「そんなことは全くなかったな」

耕作「そうだよね。むしろ農家の跡取りなんてほとんどいないし、授業も座学ばっかなんだよね」

継「一年の時は特にそうだな。農業系の授業といっても、パソコンをやったり簿記をしたり・・・」

耕作「当番実習を除けば、実習の時間はほんのちょっとだもん」

継「授業カリキュラムはともかく・・・生徒が非農家ばかりなのは、作者が取材した学校、つまり俺たちの学校のモデルだけがそうなのかと思ったら、そういうわけでもないようだな。程度の差こそあれ、全国的な傾向のようだ」

耕作「まー、考えてみればそれも当然なんだけどね。農家は年々すごい勢いで減少してるし」

継「寮も続々と廃止されているしな」

耕作「農業高校は全学区制が多いからね。県下全域から生徒を受け入れるための寮だったけど・・・今はみんな地元の子たちばっかりだから」

継「農家の跡取りに近代的な農業を教えるという学校から、非農家の子供たちに農業を教える学校に変わってきているということなんだろう」

耕作「そんなわけだから、非農家の人も安心して農業高校に進学してね!」



『例外 ~試される大地~』


耕作「まあ全国的にはそんな感じの農業高校だけど、実は重大な例外があります」

継「ほう?」

耕作「その例外とは・・・」

継「とは?」

耕作「試される大地――北海道!!」

「HOKKAIDO!!」

耕作「あそこだけは完全に別格だよ。農地法でも1つだけ特別扱いされるほどだからね・・・」

継「特別扱い・・・だと?」

耕作「ほら、農地法に『農地取得の下限面積』ってのがあるでしょ?」

継「農地を取得する場合、取得後の農地の面積がそれを下回ってはならないとされる基準のことだな?」

耕作「それそれ。普通は50a(アール)なんだけど、北海道だけ2ha(ヘクタール)なんだよね。4倍です」

継「もはや単位からして違うな・・・」

耕作「2haとかね。どんだけ土地があるのかと。しかもこれ最低基準だからね」

継「甲子園球場が1.3haだったな。確か」

※ 実際の下限面積については地域の農業委員会が設定するため、上記の値は原則的なものです。

耕作「しかも実際のところ、北海道の農家は10~20haの規模が最も多いんだよ。中には50haとか60haとか超大規模農家もあるし」

継「本州以南では耕作面積が10haを超える農家など0.1パーセントにも満たないことを考えると、まさに破格の規模だな・・・」

耕作「後継者不足の農家が40パーセントだっていうけど、本州なんてそんなもんじゃないからね」

継「ちなみに手元の資料によると、岐阜県は65歳以上の農業従事者の割合が全国一位。後継者不足も堂々の全国一位だ」

耕作「農業就業者平均年齢70歳とかね。大丈夫なのかと」

継「作者が取材させていただいた農業高校さんでも、農家出身の生徒さんは学年に一人いるかいないかだったからな」

耕作「・・・まあ、暗い話題はこんなもんにしといて、もっと明るい話題に行こうか。次の話題は――こちら!」



『農業高校は女の子が多い!?』



耕作「うちの学校は女の子のほうが多いよね?」

継「そうだな。だいたい七割が女子という設定だ」

耕作「(設定・・・)」

継「だが、これが果たして全国的な傾向なのかどうかはわからない。作者が直接取材したのは1校だけだからな」

耕作「しかもその学校を選んだ理由が『家から10分で行ける』のと『先生の中に大学時代の友人の知り合いがいる』からだもんね・・・」

継「厚かましいにも程があるな」

耕作「でもその学校の先生方がみなさんホントにいい方ばっかりでね・・・何を聞いても丁寧に答えてくださるし、逆に『これも見たら? あれも見たら?』と勧めてくださるし・・・」

継「その挙句に書き上げた本が・・・」

耕作「ごらんの有様だよ」

継「恩を仇で返すとはこのことだな」

耕作「名前から学科から、ほぼそのまま流用してるもんね・・・プロならもうちょっと考えろって感じだけど・・・」

継「あまりそういうことを言うな。先方にご迷惑がかかる」

耕作「(もう十分すぎるほど迷惑かけてると思うんだけど・・・)」

継「それで、女子の数についてだが」

耕作「うん」

継「少し気になったので、俺が独自に調べてみた」

耕作「へぇ~。どうやって調べたの?」

継「全国の農業高校のホームページにアクセスして、そこに載っている情報から男子の多い学校と女子の多い学校の数を比べてみたんだ」

耕作「暇ッ!!」

継「まあ、生徒数(男女別)をホームページ上で公開している学校は、それほど数が無いからな」

耕作「それでも全国の農業高校のホームページ全部にアクセスしたってことでしょ? 何なのキミ、アホなの?」

継「・・・若さゆえの過ちだ」

耕作「まあいいけどね。じゃあ発表してもらおうか。ドゥルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルルル・・・・・・ジャン!!」

継「結論から言うと――」



『ちょっと女子のほうが多い』



継「という感じだった」

耕作「へぇ~~~」

継「ブッチギリで女子が多いというわけではないが、女子の多い学校が七割弱という感じだったな」

耕作「そうなんだー。うちだけじゃないんだねえ」

継「いくつか例を挙げてみよう」



新潟県長岡農業高校の場合

男子:女子=192:279



茨城県水戸農業高校の場合

男子:女子=452:345



神奈川県中央農業高校の場合

男子:女子=277:301



岐阜県恵那農業高校の場合

男子:女子=172:291



継「・・・とまあ、こんな具合だ」

耕作「これを見ると、田舎だから男が多いとか都会だから女子が多いとか、そういうこともなさそうだね?」

継「そうだな。農業の盛んな地域・・・たとえば米どころの新潟などは農家の息子がたくさんいそうな印象だが、むしろ調べた限りでは女子のほうが多いようだ」

耕作「どうしてなんだろうね?」

継「はっきりしたことは言えないんだが、一つ仮説がある」

耕作「へえ? どんな?」

継「『実業系の学校を選ぶ場合、男子は工業高校へ進学することが多いから』というものだ」

耕作「あっ、なるほど~」

継「また、農業高校というと動物と触れ合ったり花を育てたりというイメージがあるから、女子に人気なのかもしれない」

耕作「そういうわけで、女の子に囲まれたラノベ的ハーレム高校ライフを送りたいと考えている男子中学生の皆さんは、ぜひとも農業高校への進学をご検討ください!」

継「ただしッ!」

耕作「!?」

継「全国的に見て女子のほうが多いからと安心することはできない。なぜならば、農業高校においては――」


『学科によって男女比がまるで違う!』


継「――という事態が発生するからだ!」

耕作「ちょ、ちょっと継!? 今そこまで言っちゃうわけ!?」

継「いけなかったか?」

耕作「マズいに決まってんじゃん! え、ええ~~っと・・・こ、これについては『のうりん』本編の2巻で触れる予定ですから、今は多くは語りません!」

継「つまり気になった人は2巻を買ってくれということだな」

耕作「露骨!!」

継「宣伝も終わったところで、次回の予定を告げておこう。次は牛のことについて、農と良田が解説することになっている。更新は2週間後、8月29日の予定だ」

耕作「なんかもう色々グダグダですんませんしたっ! おたのしみに!!」
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by thurinus | 2011-08-15 22:00 | SS


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