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第31回 弔いの形

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林檎「・・・」(なむなむ)

良田「どうしたのだ木下林檎? 動物慰霊碑の前で手を合わせて」

林檎「おっぱいさん」

良田「良田胡蝶だ!! ・・・だが、感心だな。このまえ出荷された牛の霊を慰めているのだろう?」

林檎「・・・うん」


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牛舎の前にある『畜魂碑』



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農業高校における動物慰霊式の光景。



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白い菊の花を供えます。



良田「私たちは学校の行事として動物慰霊式を行うが、日本においてこのような儀式は特別なものではない。動物を扱う場所・・・特に『動物の死と直面する』場所では、一般的に行われているものなのだ」

林檎「大学とか研究所でもやるのよね?」

良田「そうだ。例えばここ、高山市にある県の畜産研究所にも――」



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飛騨牛の礎を築いた『安福号』を顕彰する



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そのすぐ脇にある畜霊碑



良田「これは動物たちの功績を顕彰すると同時に、その霊を慰める意味も持っている」

林檎「動物たちのためのものなのね」

良田「が、そうとばかりも言い切れないのだ」

林檎「?」

良田「動物を扱う人間のためという側面も持っている」

林檎「人間の・・・ため?」

良田「あるアンケートの結果によると、動物実験を行うに際して71%もの人が、何らかの罪悪感・抵抗感を持つと回答した。そしてその感情の処理として、『供養』を選択する人が41%にものぼった」

林檎「他には?」

良田「気分転換と答えた人が19%、懺悔が8%、お清めが2%で、その他が28%だ」

林檎「(お清め・・・)ところでおっぱいさん」

良田「良田だ!」

林檎「他の国でも、こういう慰霊式は行われているの?」

良田「実はあまり例がない。『動物の墓』はあるが、『慰霊碑』が建てられたり『慰霊式』が行われている例は稀なようだ」

林檎「え!? ど、どうして・・・?」

良田「そうだな・・・一因として、欧米と日本では動物に対する考え方が根本的に違うとされる」

林檎「どういうこと・・・?」

良田「欧米の『垂直型・断続的』動物観に対し、日本は『水平型・連続的』動物観を持つ」

林檎「???」

良田「要するに、西洋人は『動物より人間のほうが高等である』(垂直型)という発想から、『人間と動物は違う』(断続的)と考える」

林檎「ふむぅ・・・?」

良田「これに対して日本人は、自分を自然の一部と考えて『人間も動物も同じ自然の一部』(連続的)であり、霊魂においては『人間も動物も等価値』(水平型)と捉える」

林檎「どうしてそんな違いが出るの?」

良田「宗教観によるものだろう。絶対神を信仰する欧米社会では、動物を人間のために殺すことは神のよって許されていると考えられている」

林檎「神さまが許してくれてるから、やってもいいっていう発想?」

良田「そのようだ。人間は神に似せて造られた特別の存在であり、神の許しを得て動物を自分のために用いることは倫理的問題を惹起しない。神の前に罪人である人間はキリストの十字架と復活によってのみ罪を赦され永遠の命を与えられるとの信仰を持っていて、罪のない動物の慰霊は考えられないのだ」

林檎「ジーザス・・・!」

良田「その言葉、地獄へ行っても忘れるなよ? まあそんなわけだから、例えばペットの墓を建てるにしても、人間用の墓地に建てることはない。『戦火の馬』に見られるようなモニュメントのようなものを建てることはあっても、それは信仰とは厳密に分けられる。偶像崇拝(神以外の像を崇めること)となってはならないからだ」

林檎「イスラムは?」

良田「もっと厳しい。動物はアッラーの造られたものであり、人間はこれを大切に扱う必要があると考えるが、偶像崇拝は絶対にありえない。古代エジプトにおいては多くの動物が神々の化身と考えられて神聖視され、様々な動物神の像が造られたが、マホメッドはそれらを全て打ち壊したからな」

林檎「ならアジアは? 中国とか・・・」

良田「アジアにおいても、実は動物慰霊というのはあまり行われていないようだ。例外的に動物慰霊碑などがある場所でも、日本の植民地政策との関連・・・要するに日本人が建てたものだったりするから、その国独自の文化と断定することができなかったりもする」

林檎「じゃあ、動物慰霊するのって日本人だけなの?」

良田「そんなこともないだろうとは思うが、世界的に見て少数派であることは確かだろうな」

林檎「そうなんだ・・・」

良田「ちなみに、欧米の『垂直型・断続的』動物観と日本の『水平型・連続的』動物観の違いが、畜産にも大きな影響を与えているが・・・そのあたりは、また別の機会に議論することにしよう」



『いろいろな慰霊塚』



林檎「うちの学校にあるのは『畜魂碑』だけど、他にもいろいろあるの?」

良田「岐阜県には『鵜塚』というものもある」

林檎「う?」

良田「鵜飼いに使う鳥だな。もっと変わったものだと・・・これだ!」



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かなり大きな碑です



林檎「昆虫・・・碑?」

良田「そう! これは岐阜市の岐阜公園内にある『名和昆虫博物館』敷地内に建てられた、昆虫の霊を慰めるための碑だ」


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いろんな昆虫が展示されています



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ちょうどお昼休み。猫が番をしていました



良田「この博物館には昆虫研究所も併設されているから、展示されている昆虫の他に、この研究所で研究のために使われた昆虫の霊を慰めるためのものなのだろう」

林檎「虫の慰霊碑まであるんだ・・・」

良田「『山川草木悉有仏性(さんせんそうもくしつうぶっしょう)』。あらゆるものに仏は宿る。オケラだってミミズだってアメンボだって・・・」

林檎「命があるものは、どんなものでも弔うのね」

良田「他にも例えば、日本には多くの馬頭観音が残っているが、これはかつて日本が『馬社会』だった名残だという」

林檎「馬・・・社会?」

良田「自動車が出現する前は、馬や牛が交通の主役だったからな。牛馬の安全祈願や、横死した牛馬の霊を慰めるために、馬頭観音が建立されたのだ」

林檎「交通安全の神さまなのね」

良田「しかし今では、馬頭観音を祀る場所は減少している。競馬場や乗馬クラブ以外では馬が使われる場所が無くなっているのがその原因だ」

林檎「動物と触れる機会が減ってるから、慰霊の機会も減ってるのね・・・」

良田「確かに日本においては、動物に対する様々な問題がある。西洋に比べて『アニマルウェルフェア』の思想や実践が立ち後れているのも事実だろう」

林檎「・・・」

良田「だが同時に、私たちは動物を自然において人間と一体と考え、その霊を弔ってきたという、世界でもあまり例を見ない歴史を有する」

林檎「優しい歴史ね」

良田「そうだな。そういう優しい心を持った歴史ある民であることを誇りに思うと同時に、先人の育んできた弔いの文化を絶やさぬよう、私たち農業高校生が守り伝えていかねばならん・・・!」






『ラノベのすゝ講演会』


林檎「ところで、3月9日に秋葉原で作者が出演した講演会がありました」



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ここ秋葉原駅からちょっと行った場所にある・・・



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この会場で行われました



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東京新聞さん主催。中日新聞の兄弟分です



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たくさんの方にご来場いただきました



良田「大盛況だな!」

林檎「上限だった100名を少し超える応募があったみたい。ありがとうございます」

良田「作者だけではなく、GA文庫の編集者さんと、東北地方で一番ラノベを売っているカリスマ書店員さんのお話も聞けたということで、かなり貴重な時間になったようだ」

林檎「この様子は3月31日の東京新聞さんの紙面で詳しくレポートしていただきます」

良田「うちで取っている中日新聞には載らないのか?」

林檎「・・・載りません!」

良田「なんと・・・ではどうにかして東京新聞を手に入れねば・・・」

林檎「関東圏にお住まいの方は一週間のお試し読みもできます~」


東京新聞さまの試読フォーム(関東圏のみ)





今回のブログの内容は『どうぶつのお墓をなぜつくるか――ペット埋葬の源流・動物塚(依田賢太郎著)』を参考にさせていただきました。

次回更新は4月8日を予定しています。

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by thurinus | 2013-03-18 21:00 | SS


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