第10回 MOCHI 約束の飯
耕作「あけまして!」
林檎「おめでとうございますー」(むぐむぐ)
耕作「いやー、新年最初の更新ということでね。当初は『ローズ花園と作るミニ門松講座』をやる予定だったんですが、新年早々どう考えても卑猥な方向に転がる記事をアップするのはいかがなものかという作者の判断により、流れました」
林檎「ふーん」(むぐむぐ)
耕作「去年は本当に色々と大変だったけど、今年はいい年になるといいね! だよね林檎ちゃん!?」
林檎「そうねー」(むぐむぐ)
耕作「・・・ちょっと林檎。新年のご挨拶のあいだくらい、モチを食べる手を休めてだね・・・」
林檎「イヤ!」
耕作「イヤって・・・」
林檎「だっておモチは時間がたてばたつほど固くなっちゃうもの。だから早く食べてあげなくちゃ」
耕作「うぅむ・・・搗きたてのモチの味を知り、モチの虜になっておる・・・。元旦に寮でモチ搗きなんかするんじゃなかったかな・・・」
『モチ米とウルチ米』
林檎「ねえ」
耕作「なんだい?」
林檎「おモチがこんなに美味しいんだから、原料になってる糯米(もちごめ)をそのまま食べても美味しいの?」
耕作「それ赤飯だよ」
林檎「え!? お赤飯ってモチ米だったの・・・?」
耕作「そうだよ。おこわとか」
林檎「知らなかった・・・。でも言われてみたら、普通のお米と食感が違ったかも?」
耕作「ぼくらが普通に食べてる米のことを粳米(うるちまい)って言うんだけど、ウルチ米とモチ米の違いは、アミロペクチンっていうデンプンの含有量の違いなんだ」
林檎「あみろぺくちん?」
耕作「そう。モチ米はアミロペクチン100%だけど、ウルチ米は80%くらい。この差が、あのモチモチ感の差になってるんだ」
林檎「ふぅん・・・」
耕作「ラオスとかベトナム、あと中国の雲南省とかだと、毎日モチ米を炊いて食べてる人たちもいるんだよ?」
林檎「毎日がお祭りね」
『モチの歴史』
林檎「おモチって、いつごろからあるわけ?」
耕作「また難しい質問を・・・まぁ諸説あるみたいだね。縄文時代にはもうあったって言う人もいるし、いやいや弥生時代からだとか、ちゃんとした証拠があるのは飛鳥時代に入ってからだとか」
林檎「証拠って?」
耕作「そのころの古文書に、日本各地の名産品について書かれた『風土記(ふどき)』って本があるんだ。その中に『白いモチに矢を射たら鳥になってどっかに行っちゃったぜー』ってお話があるんだって」
林檎「なにそれ・・・」(ドン引き)
耕作「まあ昔話だしね。でもこのことから、当時のモチについて、いくつかわかることがあるんだ」
林檎「どんな?」
耕作「まず、弓矢の的になるくらいだから、きっと丸かったんじゃないかってこと。もともと『モチ』の語源は『望月』と同じなんじゃないかって言われてるから、これは説得力ありそうだよね」
林檎「他には?」
耕作「このお話には続きがあって、モチを射た人の家は、そのあと没落しちゃうんだよね。つまり罰が当たったってワケ。このことから、モチには神聖な力があると考えられてたんじゃないかって」
林檎「そういえば、おモチっておめでたいときに使うわね」
耕作「日本人っていうか、東アジアの人たちはそもそもお米そのものに対する信仰心があるからね。モチってのはウルチ米と違って形が加工できるでしょ? だから丸くしたり色をつけたりして、もっと神聖なものにできると思ったんじゃないかな? 保存も利くしね」
林檎「そういえば、鏡餅って・・・」
耕作「うん。あれは三種の神器の『鏡』をかたどったものだって言われてるね。昔の鏡は丸かったらしいから」
林檎「鏡は貴重品だったから、おモチでレプリカを作ったのかしら?」
耕作「他にも岐阜県の海津町には、『たのみもち』っていうデッカイ鏡餅みたいなのを作る風習があるね」
林檎「たのみもち?」
耕作「そう。妊娠7ヶ月目にお嫁さんの実家が作って親戚に配るんだけど、面白いのは、中に生の小豆(あずき)を一粒入れてモチを搗くわけ。で、モチを切り分けたとき、この小豆が一緒に切れれば女の子で、切れないと男の子が産まれるっていわれてるんだ」
林檎「たのみ・・・っていうことは、願掛けみたいなものなのかしら?」
耕作「かもね。これとセットになってるのが『はらわたもち』で、産後3日目にこれまたお嫁さんの実家が作って持ってくる。おかゆの中に入れて、乳が出るようにって産婦さんに食べさせるんだって」
林檎「おかゆにおモチ!? あ、新しい・・・!」(ドキ☆)
『雑煮 ~神と人との共食~ 』
耕作「ところで、お正月に欠かせないのがお雑煮ですが」
林檎「そうですねー。むぐむぐ」(雑煮を食べながら)
耕作「この雑煮ってのは、もともとは幸を運んできてくれる年神さまを迎えるためのものなんだ。『うちに来てね!』って神さまにアピールしなきゃいけないから地元の特産品とかを供えるんだけど、それを下げてモチと一緒に一つの鍋で煮て、神さまと一緒に食べる儀式なわけ。だから雑煮の具は、すっごく地域性が出るんだよ?」
林檎「・・・このお雑煮は、菜っ葉とカツオ節だけだけど?」
耕作「ご、ごめん・・・この辺りは『モチ菜』っていう小松菜の仲間みたいなのを入れるだけのシンプルなやつだから・・・」
林檎「だがそれがいい! おかわり~!」
耕作「ちなみに岐阜県のスーパーでは、正月近くになるとこの『モチ菜』のコーナーができて、たくさんの人が買っていきます」
スーパーのモチ菜売場
林檎「でも生産地は愛知県なのね」
耕作「・・・うん。三河も青菜だけの雑煮だから・・・」
林檎「お雑煮って、いつごろからの風習なの?」
耕作「おめでたい席で食べるものって意味でなら、室町時代くらいらしいね。結婚式とかで食べてたみたいで、今でも関西で神前結婚式をすると宴会に雑煮が出るらしいよ?」
林檎「ふーん」
耕作「ちなみにこういう婚礼の席で味噌料理が出ないのは、祝い事にミソがつかないようにって験担ぎみたいだね。だから雑煮もすまし汁」
林檎「で、正月に食べるお雑煮はいつごろからできたの?」
耕作「戦国時代の初期ころみたいだね。江戸時代の初めにはちゃんとした料理として記録されてて、全国的に広まるのは元禄時代以降らしいよ? 醤油と味噌の二つの味付けも、このころからもうあったんだって」
林檎「え? 味噌?」
耕作「うん。正月に出す雑煮の味付けには『醤油派』と『味噌派』があって、これはだいたい岐阜県の関ヶ原を境にして西と東でわかれるんだね」
林檎「東が醤油で西が味噌?」
耕作「厳密に言うと、味噌を使うのは関ヶ原~兵庫県のあいだの近畿地方+香川・徳島の四国東部。他に面白いのは、鳥取・島根の山陰地方だと小豆汁を使うらしいってこと」
林檎「ぜんざい?」
耕作「そんな感じなのかなー?」
林檎「じゅるり・・・」
耕作「他にも、モチの種類によっても違いが出るね。『丸餅』と『角餅』の違いと、それを『焼く』かどうかで。一般的に、丸餅は煮て、角餅は焼く。でもこのあたりは角餅をそのまま煮ちゃう」
林檎「焼いたほうが香ばしくて美味しそう」
耕作「まあでも、こういうのはあくまで一般論だからね。食文化ってのは結婚や引っ越しでミックスされる傾向が大きいから」
林檎「奥さんのほうが力が強いと、奥さんの実家の雑煮を作るでしょうしね」
耕作「そうやって色々な地方の雑煮がミックスされていって、やがて新たな食文化が生まれていくのかもしれないね」
林檎「・・・」
耕作「ちなみに、雑煮の種類についての地図はこちらで見ることができます。雑煮についての面白い記事がいっぱいなので、みなさんぜひ・・・ん? どうしたの林檎? さっきから妙に静かだけど――」
林檎「・・・・・・」(どんどん)←胸を叩いている
耕作「えっ!? モチが喉に詰まったって!? ちょっと農ッ!! 掃除機もってきて掃除機ィィィイイイイイイイイイ――――っっ!!!」
おモチは喉に詰まらないよう
小さく切って食べてくださいね☆
次回更新は1月23日、久しぶりに40が登場する予定です。
by thurinus
| 2012-01-02 22:00
| SS
若旦那の中に(袋の中が作者)
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