第4回 害獣殲滅計画
耕作「大分県豊後大野市の市長さんが発表した『害獣が増えたからオオカミを放つぜー』っていう主張には何となく惹かれるものがあります。畑耕作です」
良田「良田胡蝶だ。・・・おい俗物、のっけから何を言っている?」
耕作「もう限界なんだよ!!」
良田「!?」
耕作「害獣だよ害獣! あの動物ども調子に乗りやがって! 絶滅させたろか!?」
良田「お、落ち着け畑耕作! 以前に猿を捕獲したとき、我々で野生動物と人間の共存を模索すると誓ったではないか! 忘れたのか!?」(1巻第8限参照)
耕作「ペェッ!!」(←ツバを吐く)
良田「!?」
耕作「良田さんこそ何にもわかっちゃいない! もう事態はそれどころじゃないところまで進んでるんだよ! 限界超えてんだよ!!」
良田「し、しかし・・・私は諦めんぞ! 人間も自然の一部である以上、動物と人間は必ずや共存できるはずだ!」
耕作「まだそんな甘っちょろいこと言ってんのか! そんな夢や希望ばっかり胸に抱いてるから止めどなくおっぱいが大きくなるんだ! このおっぱい!!」
良田「む、胸は関係ないだろう!!」
耕作「だいたい良田さん、偉そうなこと言ってるけど状況理解してるの? 去年の岐阜県の被害総額がどれだけか知ってる?」
良田「どれだけなのだ?」
耕作「四億円です」
良田「よ・・・」
耕作「もうね、共存とか無理。っていうか、駆除するのも限界っぽい。そもそも農家は普段の農作業だけで手一杯なのに、そこにさらに害獣の駆除なんて手が回るわけがないじゃん? せいぜい電動銃とかヒトシくん使って追い払うくらいが精一杯だって」
良田「・・・私も気になっていたし読者からも質問が来ているのだが、あの『ヒトシくん』とやらは実在する道具なのか?」
耕作「します。実在します。奈良県果樹振興センターの赤土仁志(しゃくど・ひとし)主任研究員さんが開発したので、開発者の名前を取って『ヒトシくん』と名付けられました」
良田「意外と安直な・・・」
耕作「種子島で製造されたから鉄砲が『種子島』と呼ばれたようなね。そしてこのヒトシくんも、戦国時代に爆発的に広まった種子島のように日本全土に爆発的に広がっていきました。ちなみに正式名称には『2号』がつくけど、これは多分あれなんだろうね、モビルスーツで例えるとザクみたいな感じなんだろうね。旧ザクと普通のザクみたいなね」
良田「ネットなどで検索してみると、本当に全国に広がっているのだな・・・しかも各県で微妙にアレンジされているし・・・」
耕作「モビルスーツに例えるとジムみたいなね。用途や地形なんかに合わせて複数のバリエーションを用意する的なね。まあネットで検索するとヒトシくん人形ばっかヒットしちゃうんだけど、とにかくこうして農家は害獣と戦うために日夜工夫を凝らしてるわけですよ」
良田「ふむ・・・」
耕作「でもね、それでも足りない。全然追いつかない。人間がいくらイロイロ考えても、動物はもっと多彩な方法で攻めてくるから。っていうかそもそも害獣って何種類もいるから」
良田「そうだな。サルだけではなく、イノシシやカラスなども害獣に含まれるな」
耕作「そう。そんで、それぞれ好きな作物や習性なんかも違ってくるから。農家はその全てに対策を立てなきゃいけないんだから、もうやってらんないって事になる。『オオカミ放って食い尽くしてもらおうぜ』って主張も『素敵やん?』ってなる」
良田「いや・・・それはさすがにイカンだろう? オオカミが野生化したらどうする? 作物どころか人間が食われるぞ?」
耕作「うん。まあそうなんだけどね」
良田「冷静になれ」
耕作「うん・・・」
良田「気持ちはわかるが、現実的な解決方法を模索すべきだろう」
耕作「で、でも! オオカミを放つのだって現実的な提案なんだよ!? 『日本オオカミ協会』の皆さんだってそう言ってるもん!」
良田「日本オオカミ協会!?」
耕作「ホームページもあります」
良田「すごいカッコイイではないか!」
耕作「本も出てるんだよ?」
ストレート過ぎるタイトルの普及書
良田「た、確かに圧倒されるが・・・やはり現実的ではないだろう。日本オオカミ協会の活動には敬意を表するが、そうすぐにオオカミのイメージが変わるとも思えん。今オオカミを放とうとしても、住民の反対意見が大きすぎて実現は不可能だろう」
耕作「・・・・・・」
良田「今できることを探そうではないか」
耕作「・・・そうだね。ごめんね良田さん? 今日のぼく、絡みづらかったでしょ?」
良田「気にするな。それよりも、害獣についてもっと詳しいことを教えてくれ。我が県で最も被害額の大きなのはどれだ?」
耕作「イノシシです。断然イノシシ。1億7千万円」
良田「半分弱がイノシシとはな・・・次は?」
耕作「次がサル。5600万円。その下に横並びでシカ、カラス、カモシカと来て、それぞれ3千万円くらい。で、ヌートリア、ハクビシン、アライグマラスカルと続くわけ」
良田「カモシカも? 天然記念物だろう?」
耕作「だからタチが悪い。駆除したら何となくマズイみたいな感じするし、可哀想だから殺すなみたいなことも言われるから」
良田「まあ・・・そうだろうな」
耕作「そりゃ可哀想だよ。ぼくだってそう思うよ? でもじゃあ、どうしろってのさ? 殺すなって言う人が山に住んでカモシカ追い払ってくれるわけ?」
良田「無理だろうな」
耕作「そう。無理なわけ。まあカモシカによる主な被害は林業方面で、ぼくは林業やってないからカモシカの駆除とかにはかかわったことないんだけど・・・だからこそ、余計な口は挟めないと思うんだよ。最前線で戦ってる人に、安全な場所から無責任なことを言うようなことはしたくないし」
良田「そうだな。被害を受けていない街に住む人々も、きっと街中にまでカモシカが来るような事態になれば『駆除をしろ』と言うようになるだろう。それは想像に難くない未来だ」
耕作「最近だと街にもクマが出たりとかニュースになってるけど、そうならないように田舎の農家が苦労してるって事は憶えてて欲しいよね」
良田「確かに」
耕作「それに・・・害獣って農家だけが被害を受けてるように思いがちだけど、実は国民全員に関係のあることなんだよ」
良田「どういう意味だ?」
耕作「『農業災害補填法』って知ってる?」
良田「あ? ああ・・・確か、農業共済の根拠になっている法律だな? 災害などで作物がダメになった場合、その損害を補填してくれるという・・・」
耕作「そう。共済だから、農家がお金を出し合って損害を補填しようっていう、いわば保険みたいなもんなわけだけど・・・これ実は半分が国のお金です。みなさんの税金です」
良田「なっ!?」
耕作「全てのケースで適用されるってわけじゃないみたいだけどね。でもさ、考えてみてよ。鳥獣害で作物の生産量が減少したとすると、供給が減るわけだから作物の価格は上昇するよね? そうなるとやっぱり消費者の負担は増えるわけ。それだけお母さんのお財布が軽くなるわけ」
良田「むぅ・・・」
耕作「そういうふうに考えていくと、害獣対策ってのは日本人全員が考えていかなきゃいけない問題だし、できることを見つけて行動していくべきだと思うんだよね。できる範囲でね」
良田「しかし・・・我々のような農業従事者ならまだしも、街中で暮らす一般市民に何ができるというのだ?」
耕作「まあ考えれば色々と出てくるとは思うけど、そうだなー・・・まず第一に、休日に田舎にバーベキューとかに行ったとき生ゴミや食べ物を放置しないことだね。これ餌付けと一緒だから」
良田「それは当然のことだと思うが・・・」
耕作「その当然ができてない。他にも、墓参りのお供え物とかね。これは意外と盲点なんだけど、こういうのを放置して帰るのもできれば自粛して欲しいよね。こういう所で餌を食べて人に慣れた動物は、どんどん行動が大胆になってくから」
良田「一度人間の食べ物の味を憶えた動物は、次々と他の食べ物にも手を出していくからな。そして栄養状態がよくなって個体数も激増するし、そうなると山だけでは暮らせなくなって人里にも降りてくる・・・悪循環だな」
耕作「この負の連鎖を断ち切るためには、やっぱり守ってるだけじゃダメなんだよ。攻撃的防御に転じないと」
良田「攻撃的防御?」
耕作「でまあ、最初の話に戻るんですが」
良田「最初というと・・・オオカミの話か? だから、さすがにそれは荒唐無稽すぎ――」
耕作「いや、犬でいいんじゃないかと」
良田「あ?」
耕作「犬で」
良田「・・・?」
耕作「だからさ。オオカミは無理でも、犬なら普通にみんな飼えるわけでしょ? だったら犬を訓練して、猿を追い払うようにすればいいじゃん。ほら、犬って頭いいし人懐っこいし。ちゃんと訓練してやれば、オオカミみたいに人間襲うって危険もほとんどないわけでしょ?」
良田「あっ! た、確かに・・・」
耕作「で、実際もうあります。モンキードッグ」
良田「モンキードッグ!?」
耕作「そうモンキードッグ。これは盲導犬、介助犬、警察犬に続く、新たなる『働く犬』になるね。もう訓練所まで設置されてて、厳しい訓練をくぐり抜けてきたエリートドッグのみが山に放たれているのさ」
良田「放し飼いにしてもいいのか?」
耕作「そういう許可が出るらしいね。もちろん、ちゃんと訓練を受けて、試験に合格した犬だけが認められるわけだけど」
良田「ふむ・・・確かに犬は頭がいい動物だし、家畜の中では断然人に慣れやすく、飼いやすい。ちゃんと訓練を受けているのであれば大丈夫・・・か?」
耕作「青森県のむつ市だと、モンキードッグのおかげで被害が7割も減少したって報告があるくらいだからね! 効果は実証されてるよ!」
良田「ほう! それは素晴らしい成果ではないか!」
耕作「犬だけじゃなくて、ヤギでも効果があるって報告も上がってきてるから。どんな動物でもいいから、何かが畑にいるっていう状態を作ることが大切なのかもね」
良田「牛でもいいわけか?」
耕作「いいんじゃない? 牛って大きいし、けっこうでっかい声で鳴くし」
良田「では私は牛を使った害獣対策について考えてみるとしよう!」
耕作「期待してます」
良田「・・・ところで畑耕作」
耕作「なぁに?」
良田「『どんな動物でもいい』ということは、もちろん人間もそこに含まれるのだよな?」
耕作「まあ、だろうね」
良田「人間がいつも畑にいれば、動物もめったなことはしないのだろうな」
耕作「と、思うけど?」
良田「つまり動物たちが山から下りて来るようになったのは、農村に人がいなくなったから・・・ということにはならないか?」
耕作「結局そこに行き着くんだよなあ・・・」
次回更新は10月10日です。
#
by thurinus
| 2011-09-26 19:00
| SS
第3回 わらびー
耕作「はーい! 4週間ぶりのこんにちは、畑耕作です。今回は林檎ちゃんと一緒に、ワラビーについて語ってみたいと思います。ほら林檎ちゃん、みんなにご挨拶して?」
林檎「・・・」
耕作「?」
林檎「・・・」
耕作「ど、どうしたの?」
林檎「・・・」
耕作「え? なんか・・・怒ってる?」
林檎「耕作」
耕作「は、はい?」
林檎「わたし、メインヒロインだよね?」
耕作「そ、そうだと思うけど・・・1巻で表紙だったし・・・」
林檎「メインヒロインなのに、どうして今頃やっと出番が回ってくるの?」
耕作「ど・・・どうして・・・・・・と、言われましても・・・」
林檎「普通、一番はじめに主人公とヒロインの出番があって、それから過真鳥くんとかデカ尻さんとかの出番があるべきじゃない? 違う?」
耕作「いや・・・うん・・・」
林檎「おっぱいさんなんて、準レギュラーなのよ?」
耕作「(ぶっちゃけ単独では絡みづらいから、とは言いづらい・・・)」
林檎「ちゃんと理由を説明して」
耕作「そ、それは・・・そう! このブログは、本編であんまり目立てなかった人にスポットを当てるって意味を持ってるからなんだよ!」
林檎「・・・?」
耕作「もちろん商業的なことを考えれば、林檎ちゃんの出番がいっぱいあったほうがいいに決まってるよ? 当たり前ジャン! でもこのブログは非営利だから! 作者の趣味だから! マイナーキャラを活躍させてあげたいっていう親心? 的な? そういうのがあるんだよ!!」
林檎「・・・」
耕作「わ・・・わかって、くれ・・・た?」
林檎「・・・」(こくん)
耕作「じゃあ・・・ほら、ご挨拶して? 今日は林檎ちゃんの大好きなワラビーのお話をするからね? だっこしてる若旦那のぶんも・・・ね?」」
林檎「ニッポンノミナサン、コニチワー」
耕作「・・・?」
林檎「代弁してみた」
耕作「ワラビーの!?」
『なんで若旦那?』
耕作「それで、ワラビーの話なわけだけど」
林檎「うん」
耕作「林檎ちゃんはもちろんワラビーのこと知ってるよね?」
林檎「埼玉県蕨(わらび)市のマスコットのことでしょう?」
耕作「違うよ!! 合ってるけど違うよ!!」
林檎「ちなみにこれ↓です」
蕨市マスコット『ワラビー』(平成元年制定)
耕作「まあ確かに蕨市は全市を挙げてワラビー押してるっていうか、ワラビー歯科とかワラビークリニックとかもあるけど・・・」
林檎「わらびー餅は?」
耕作「あるよ!!」(高知県のいち動物公園内レストラン『ラクーン』さんに実在。¥400ナリ)
林檎「そろそろ本題に入りましょう」
耕作「・・・えーっと、ワラビーっていうのはカンガルーの小っちゃいやつです。いろいろ種類があるんだけど、うちの学校で飼ってるのは『ダマヤブワラビー』っていう種類で、本当に小型のカンガルーそのものって感じだね。名前は『若旦那(わかだんな)』で、学校公認マスコットとして愛されています」
林檎「どうして『若旦那』って名前なの?」
耕作「あー、それは取材先の学校さんで飼ってるワラビーの名前が若旦那だったからだねー」
林檎「・・・」
耕作「あまりにも素晴らしいセンスだったから」
林檎「じゃあ、リアルでも若旦那がいるわけ?」
耕作「リアル若旦那はもう死んだよ」
林檎「!?」
耕作「ほら、あの話おぼえてる? ぼくが冬の寒い日に若旦那を保護したって話」
林檎「おぼえてるけど・・・」
耕作「あれは作者が実際に取材した話を元にしてるんだ」
林檎「・・・じゃあ、リアル若旦那も寒くて倒れてたの?」
耕作「もちろん細部は違うよ? ワラビーの世話をしてたT橋くんっていう生徒さんに話を聞けたんで、それを元にして話を組み立てたんだけど・・・」
林檎「けど?」
耕作「リアル若旦那はそのときの衰弱がもとで、死んじゃいました。本編みたいに助かりませんでした」
林檎「・・・若旦那!」
耕作「朝、当番実習にやって来たT橋くんがワラビーハウスの中を見ると、寒さに凍えて地面に倒れている若旦那の姿が・・・」
林檎「どうして・・・?」
耕作「ワラビーハウスには冬の寒さをしのぐためのエアコンとホットカーペットが用意されてるんだけど、どうやら年を取って弱ってた若旦那は、自分の息子達にそこから追い出されちゃったらしいんだよね」
林檎「若旦那・・・かわいそう・・・」
耕作「どーぶつだからね。仕方ないよ」
林檎「それで死んじゃったの・・・?」
耕作「いや。T橋くんが助けだして、教官室で毛布に包んだりして懸命に看護をしたんだ。そのかいあって一度は回復したんだけど・・・」
林檎「・・・死んじゃったの?」
耕作「死んじゃった」
林檎「・・・」
耕作「だから本編で出てくる若旦那は、そのときの若旦那がもし生きてたら・・・こんなワラビーがいてくれたら・・・あんなこといいな、できたらいいな・・・っていう、作者の夢とか理想とかが反映されてるんだよ」
『リアルなワラビーって、どんなの?』
耕作「そういうわけで今回は、そういった理想化されたワラビーじゃなくて、リアルなワラビーはどんな感じかってのをお話ししたいと思います」
林檎「リアルな・・・?」
耕作「今、林檎ちゃんは若旦那を抱っこしてるよね?」
林檎「うん」
耕作「ワラビーは基本的に野生動物だから、人間には懐きません」
林檎「!! ・・・逃げられた」
耕作「それでいいんだよ。あんまり触ろうとするとストレスで弱っちゃうからね」
林檎「でも・・・ペットとして売ってるんでしょう? 小さな頃から育てれば・・・」
耕作「まあ大丈夫な子もいるだろうけど、やっぱりストレスは溜まるんじゃないかなー? それでなくても日本で生活するだけでワラビーにはすっごいストレスが溜まるんだから」
林檎「ストレス?」
耕作「日本でワラビーを飼うのは本当に大変なんだ。取材先の学校さんでも、最初は全滅させちゃったから」
林檎「全滅・・・」
耕作「まず、日本の気候が合わないんだよね。夏は蒸し暑くて冬はギンギンに冷えるもん。だったら部屋の中で飼えばいいじゃないかって思うかもしれないけど、ワラビーは基本的にジャンプ移動するからね。狭い場所だとこれまたストレスが溜まるし」
林檎「じゃあ・・・ワラビーが跳ね回れるほど大きな敷地と、暑さや寒さをしのげるハウスがあればいいの?」
耕作「そうだね。そういう環境が整ってて、無理やり人に慣れさせないでおこうと思えば、それなりに飼いやすい動物ではあるかな? 吠えないし」
林檎「食べ物は?」
耕作「カットした野菜、特にサツマイモとかニンジンが好きみたいだね。それから忘れちゃいけないのがワラビーフード! 犬とか猫のカリカリみたいなやつなんだけど、これをちゃんと食べさせるのがポイントだよ!」
林檎「野菜・・・カリカリ・・・」(メモメモ)
耕作「取材先の学校の畜産の先生も、『飼育の成功はワラビーフードが決め手』って言ってたくらいだからね!」
林檎「ワラビーフードはどこで買えるの?」
耕作「ワラビーを取り扱ってるペットショップさんなら置いてるから、飼うときに一緒に買ったらいいと思うよ」
林檎「・・・そもそもワラビーって、ペットショップで売っているの?」
耕作「売ってるみたいだね。ネットで調べると結構出てくるし」
林檎「個人で飼ってる人・・・いる?」
耕作「いるよー。この『愛ちゃん』とか」
愛ちゃん
林檎「はぅぅ~・・・あ、愛ちゃん、カワユスぅ・・・!」
耕作「呼ぶと来るとか、手から餌を食べてくれるとか、かなり人慣れしてるよね。愛情を持って飼育した証拠だよ」
林檎「トップブリーダー。トップブリーダー」
耕作「この動画を見るとわかるけど、ワラビーは移動するとき必ずジャンプするわけじゃないんだ」
林檎「ほんとだ・・・! 前脚を使って歩いてる・・・の?」
耕作「そうそう。他にもジャンプの仕方とかにも違いがあって、ちょっと横方向にジャンプ移動するときは、バランスを取るために前脚を横に開いたりもするんだよー」
林檎「奥が深い・・・」
耕作「ワラビーは動物園とかにもいたりするし、好きになった人は観察してみるのもいいんじゃないかな」
林檎「・・・でも」
耕作「でも?」
林檎「・・・やっぱり家で飼いたい・・・っ!!」
耕作「うーん・・・そういう気持ちもよくわかるし、お金さえ払えるのならそれを誰かが止めることはできないんだけど・・・」
林檎「けど?」
耕作「ちゃんと飼えない動物を無理して飼うことは、その動物を不幸にすると共に・・・自分以外の多くの人にも迷惑をかける可能性があることを忘れないで欲しいんだ」
林檎「自分以外って・・・家族、とか?」
耕作「その答えは次回に譲ろうか。次の更新は2週間後の9月26日。『害獣』について、ぼくと良田さんでお送りします」
林檎「むずかしい話になる予感・・・!」
林檎「・・・」
耕作「?」
林檎「・・・」
耕作「ど、どうしたの?」
林檎「・・・」
耕作「え? なんか・・・怒ってる?」
林檎「耕作」
耕作「は、はい?」
林檎「わたし、メインヒロインだよね?」
耕作「そ、そうだと思うけど・・・1巻で表紙だったし・・・」
林檎「メインヒロインなのに、どうして今頃やっと出番が回ってくるの?」
耕作「ど・・・どうして・・・・・・と、言われましても・・・」
林檎「普通、一番はじめに主人公とヒロインの出番があって、それから過真鳥くんとかデカ尻さんとかの出番があるべきじゃない? 違う?」
耕作「いや・・・うん・・・」
林檎「おっぱいさんなんて、準レギュラーなのよ?」
耕作「(ぶっちゃけ単独では絡みづらいから、とは言いづらい・・・)」
林檎「ちゃんと理由を説明して」
耕作「そ、それは・・・そう! このブログは、本編であんまり目立てなかった人にスポットを当てるって意味を持ってるからなんだよ!」
林檎「・・・?」
耕作「もちろん商業的なことを考えれば、林檎ちゃんの出番がいっぱいあったほうがいいに決まってるよ? 当たり前ジャン! でもこのブログは非営利だから! 作者の趣味だから! マイナーキャラを活躍させてあげたいっていう親心? 的な? そういうのがあるんだよ!!」
林檎「・・・」
耕作「わ・・・わかって、くれ・・・た?」
林檎「・・・」(こくん)
耕作「じゃあ・・・ほら、ご挨拶して? 今日は林檎ちゃんの大好きなワラビーのお話をするからね? だっこしてる若旦那のぶんも・・・ね?」」
林檎「ニッポンノミナサン、コニチワー」
耕作「・・・?」
林檎「代弁してみた」
耕作「ワラビーの!?」
『なんで若旦那?』
耕作「それで、ワラビーの話なわけだけど」
林檎「うん」
耕作「林檎ちゃんはもちろんワラビーのこと知ってるよね?」
林檎「埼玉県蕨(わらび)市のマスコットのことでしょう?」
耕作「違うよ!! 合ってるけど違うよ!!」
林檎「ちなみにこれ↓です」
蕨市マスコット『ワラビー』(平成元年制定)
耕作「まあ確かに蕨市は全市を挙げてワラビー押してるっていうか、ワラビー歯科とかワラビークリニックとかもあるけど・・・」
林檎「わらびー餅は?」
耕作「あるよ!!」(高知県のいち動物公園内レストラン『ラクーン』さんに実在。¥400ナリ)
林檎「そろそろ本題に入りましょう」
耕作「・・・えーっと、ワラビーっていうのはカンガルーの小っちゃいやつです。いろいろ種類があるんだけど、うちの学校で飼ってるのは『ダマヤブワラビー』っていう種類で、本当に小型のカンガルーそのものって感じだね。名前は『若旦那(わかだんな)』で、学校公認マスコットとして愛されています」
林檎「どうして『若旦那』って名前なの?」
耕作「あー、それは取材先の学校さんで飼ってるワラビーの名前が若旦那だったからだねー」
林檎「・・・」
耕作「あまりにも素晴らしいセンスだったから」
林檎「じゃあ、リアルでも若旦那がいるわけ?」
耕作「リアル若旦那はもう死んだよ」
林檎「!?」
耕作「ほら、あの話おぼえてる? ぼくが冬の寒い日に若旦那を保護したって話」
林檎「おぼえてるけど・・・」
耕作「あれは作者が実際に取材した話を元にしてるんだ」
林檎「・・・じゃあ、リアル若旦那も寒くて倒れてたの?」
耕作「もちろん細部は違うよ? ワラビーの世話をしてたT橋くんっていう生徒さんに話を聞けたんで、それを元にして話を組み立てたんだけど・・・」
林檎「けど?」
耕作「リアル若旦那はそのときの衰弱がもとで、死んじゃいました。本編みたいに助かりませんでした」
林檎「・・・若旦那!」
耕作「朝、当番実習にやって来たT橋くんがワラビーハウスの中を見ると、寒さに凍えて地面に倒れている若旦那の姿が・・・」
林檎「どうして・・・?」
耕作「ワラビーハウスには冬の寒さをしのぐためのエアコンとホットカーペットが用意されてるんだけど、どうやら年を取って弱ってた若旦那は、自分の息子達にそこから追い出されちゃったらしいんだよね」
林檎「若旦那・・・かわいそう・・・」
耕作「どーぶつだからね。仕方ないよ」
林檎「それで死んじゃったの・・・?」
耕作「いや。T橋くんが助けだして、教官室で毛布に包んだりして懸命に看護をしたんだ。そのかいあって一度は回復したんだけど・・・」
林檎「・・・死んじゃったの?」
耕作「死んじゃった」
林檎「・・・」
耕作「だから本編で出てくる若旦那は、そのときの若旦那がもし生きてたら・・・こんなワラビーがいてくれたら・・・あんなこといいな、できたらいいな・・・っていう、作者の夢とか理想とかが反映されてるんだよ」
『リアルなワラビーって、どんなの?』
耕作「そういうわけで今回は、そういった理想化されたワラビーじゃなくて、リアルなワラビーはどんな感じかってのをお話ししたいと思います」
林檎「リアルな・・・?」
耕作「今、林檎ちゃんは若旦那を抱っこしてるよね?」
林檎「うん」
耕作「ワラビーは基本的に野生動物だから、人間には懐きません」
林檎「!! ・・・逃げられた」
耕作「それでいいんだよ。あんまり触ろうとするとストレスで弱っちゃうからね」
林檎「でも・・・ペットとして売ってるんでしょう? 小さな頃から育てれば・・・」
耕作「まあ大丈夫な子もいるだろうけど、やっぱりストレスは溜まるんじゃないかなー? それでなくても日本で生活するだけでワラビーにはすっごいストレスが溜まるんだから」
林檎「ストレス?」
耕作「日本でワラビーを飼うのは本当に大変なんだ。取材先の学校さんでも、最初は全滅させちゃったから」
林檎「全滅・・・」
耕作「まず、日本の気候が合わないんだよね。夏は蒸し暑くて冬はギンギンに冷えるもん。だったら部屋の中で飼えばいいじゃないかって思うかもしれないけど、ワラビーは基本的にジャンプ移動するからね。狭い場所だとこれまたストレスが溜まるし」
林檎「じゃあ・・・ワラビーが跳ね回れるほど大きな敷地と、暑さや寒さをしのげるハウスがあればいいの?」
耕作「そうだね。そういう環境が整ってて、無理やり人に慣れさせないでおこうと思えば、それなりに飼いやすい動物ではあるかな? 吠えないし」
林檎「食べ物は?」
耕作「カットした野菜、特にサツマイモとかニンジンが好きみたいだね。それから忘れちゃいけないのがワラビーフード! 犬とか猫のカリカリみたいなやつなんだけど、これをちゃんと食べさせるのがポイントだよ!」
林檎「野菜・・・カリカリ・・・」(メモメモ)
耕作「取材先の学校の畜産の先生も、『飼育の成功はワラビーフードが決め手』って言ってたくらいだからね!」
林檎「ワラビーフードはどこで買えるの?」
耕作「ワラビーを取り扱ってるペットショップさんなら置いてるから、飼うときに一緒に買ったらいいと思うよ」
林檎「・・・そもそもワラビーって、ペットショップで売っているの?」
耕作「売ってるみたいだね。ネットで調べると結構出てくるし」
林檎「個人で飼ってる人・・・いる?」
耕作「いるよー。この『愛ちゃん』とか」
愛ちゃん
林檎「はぅぅ~・・・あ、愛ちゃん、カワユスぅ・・・!」
耕作「呼ぶと来るとか、手から餌を食べてくれるとか、かなり人慣れしてるよね。愛情を持って飼育した証拠だよ」
林檎「トップブリーダー。トップブリーダー」
耕作「この動画を見るとわかるけど、ワラビーは移動するとき必ずジャンプするわけじゃないんだ」
林檎「ほんとだ・・・! 前脚を使って歩いてる・・・の?」
耕作「そうそう。他にもジャンプの仕方とかにも違いがあって、ちょっと横方向にジャンプ移動するときは、バランスを取るために前脚を横に開いたりもするんだよー」
林檎「奥が深い・・・」
耕作「ワラビーは動物園とかにもいたりするし、好きになった人は観察してみるのもいいんじゃないかな」
林檎「・・・でも」
耕作「でも?」
林檎「・・・やっぱり家で飼いたい・・・っ!!」
耕作「うーん・・・そういう気持ちもよくわかるし、お金さえ払えるのならそれを誰かが止めることはできないんだけど・・・」
林檎「けど?」
耕作「ちゃんと飼えない動物を無理して飼うことは、その動物を不幸にすると共に・・・自分以外の多くの人にも迷惑をかける可能性があることを忘れないで欲しいんだ」
林檎「自分以外って・・・家族、とか?」
耕作「その答えは次回に譲ろうか。次の更新は2週間後の9月26日。『害獣』について、ぼくと良田さんでお送りします」
林檎「むずかしい話になる予感・・・!」
#
by thurinus
| 2011-09-12 06:54
| SS
若旦那の中に(袋の中が作者)
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